……ごめんね、クリフ。

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 ――そういうわけで、みんな邪魔だった。それは、仮に――本当に仮に、私を受け入れてくれる奇特な人がいても同じこと。だって、あのクリフだよ? 誰に対しても遍く愛を注ぐ、あるクリフだよ? 他に人間(ひと)なんていたら、その分だけ均等に分散される。だけど、そんなのはまっぴら御免――クリフには、大海(うみ)より深いその愛情(あい)を私だけに注いでほしいんだから。  とは言え、そんな理由で彼以外のみんなを消してしまうわけにもいかず。不可能ではないにしても、相当骨が折れるだろうし――それ以前に、そんな悪業(こと)をしてしまえば、あのクリフとは言え流石に愛してくれなくなるかも。それこそ、憎悪を抱かれる可能性も  ――でも、この方法なら大丈夫。クリフを救うべく、思いがけず人ひとりを殺めてしまい磔に。そして命の危機に瀕し、恐らくは防衛本能により思い掛けず村人全員を灰にする結果となってしまい――  ――うん、これなら私に対し苦痛こそ抱けど、恨むなんてことはまずありえない。あの日、あの一点に集まった村人全員を焼き払ってしまっても、まあ致し方のない口実(りゆう)が得られるわけで。あの焔も射程範囲が限られていて、あちこちに幾度も放とうにも、その度にそれ相応の口実なんて都合良く見つからないだろうし。  ……でも、あれは想定外だったな。クリフなら、どうにか私を助けようとしてくれるのは分かってたけど……それでも、あの華奢な彼が拘束を(ほど)けてしまうとは思わなかった。本当に死ななくて良かったと、改めて心の底から思う。
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