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「……どうか、謝らないでクリフ。むしろ、謝らなければならないのは私の方。ごめんね、クリフの大切な人達をみんな殺しちゃって」
「……ううん、それはエマが悪いんじゃない。元はと言えば、僕が捕まったりなんてしなければ……」
ともあれ、クリフの謝罪に答える形で私の方も謝意を述べる。すると、やはり思った通りの懺悔が彼の口から零れ落ちて……いや、まあ誘拐だって貴方のせいじゃないんだけど。
まあ、それはそれとして……ごめんね、クリフ。やっぱり、私は悪魔でしかなかったよ。半分なんて烏滸がましい――正真正銘、私の全てが救うようのない悪魔でしかなかったよ。……まあ、悪魔でもクリフなら――
「…………クリフ?」
そんな思考が、ピタリと一時停止する。ふと歌を口ずさんだかと思えば、瞬く間にピタリと止んだから。いったい、どうしたのだろ……ああ、そういうことか。でも――
「…………エマ?」
卒然、パッと目を瞠りそう口にするクリフ。まあ、そうなるよね。彼が……いや、私自身ですら一度も耳にしたことのない歌声が、不意に虚空へと響いたのだから。
雲一つない蒼天の下、柔らかな陽光を受けゆったり口ずさみながら彼の方へ近づいていく。そして――
「――貴方の言った通りだね、クリフ。神様は、私を見捨てないでいてくれた」
――――そう言って、そっと唇を塞いだ。
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