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『――良かったら、こちらをどうぞ』
『……へっ? あ、ありがと……』
困惑しつつそう伝えると、柔らかな微笑を湛えたまま答える男性。そんな彼が差し出したのは、甘い香り漂う白のマグカップ。匂い、そして色から断ずるに中身はココア……うん、美味しい。
『――そう言えば、自己紹介が遅れたね。僕はクリフ。これでも、一応は神父――そして、この修道院の責任者を務めているよ』
『あっ、えっと……私は、エマ……』
『そっか、宜しくねエマ』
そんな私の返答に、ニコッと微笑み応えるクリフ。そんな彼の笑顔に、どうしてか不意に心臓が跳ねて――
ともあれ、彼の話によると――昨日の黄昏時、とあるアーチ橋の付近でぐったり倒れていたのを目にし、こうして丘の麓の修道院に連れてきたとのこと。……そう言えば、そんな記憶もうっすらなくはないような。まあ、いずれにせよ――
『……でも、良いの? 追い出すなら、今のうちだと思うけど。だって、私は――』
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