転勤族から引っ越したい

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 私のパパは、いわゆる転勤族だ。  初めての転勤は、私が小学3年生の時だった。  突然パパの転勤が決まって、クラスメイトに別れを告げられないままに転校してしまった。  それ以来、2年以上、1つの土地でとどまったことがない。  北海道から福岡に転勤した時なんて『遠すぎない!?』と困惑したのを覚えている。   「いやー。こういう生活はたのしいな。毎日が刺激に満ちてるよ」  パパはかなりの楽観主義で、転勤を楽しんでしまっている。  だけど、ついていく家族にしては、たまったものじゃない。  特に不満をためているのは、ママだろう。  最低限の家事はしているけど、ずっと家の中でスマホを弄っている。  本人曰く「どうせすぐに離れるから」とのことだった。  SNSなどでの交流の方が、長く続くのだろう。  一人娘の私はというと。 (メンドくさいけど、慣れてきた)  とっくの昔に諦めていた。  転校することに抵抗するのではなく、『転校するもの』として、学校生活を過ごすことにしている。  友人達とは程よい距離感を保ち、最初から転校する可能性を告げてから接したりしている。  そうすると腫物扱いされたり、変に同情されることがある。  そんなんだから、不満がないわけじゃない。  転校ばかりな境遇に、劣等感を覚えたことだってある。  でも、自分なりに『我慢できる形』を模索して、今は落ち着いている。    なんだかんだで楽観的に考えられる時点で『パパの血が多少は入っているんだ』と実感する。  だけど、来年からは事情が変わってくる。
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