転勤族から引っ越したい

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(こうなったら、意地だ!)     なんとしても、パパに相談してやる!  真面目に話し合ってやる!  私は昔から、思い立ったら行動が早い。  その日は、引っ越しの準備をしていた。  もう5度目の引っ越しだ。  私もパパもかなり手慣れていて、あっという間に段ボールに荷物がしまわれていく。  この技術を生かして、引っ越し業者で働けるかもしれない。  そう自負してしまうほどには、引っ越し作業を極めてしまっている。  ちなみにママはスマホを見ながら、ソファに座っている。  手伝う素振りは全くないけど、いつものことだ。 「ねえ、ママ。ちょっとぐらいは手伝ってよ」 「だって、あなた達二人でやった方が早いじゃない。アタシは邪魔でしょ」 「そうだけど、少しは手伝ってよ」  私がため息をつくと、ママは「ちょっと眠いから」とだけ言い残して、寝室へと向かってしまった。  視線を移すと、パパは愛想笑いを浮べている。  パパは、ママに強く言えない。  私がいくら小言を言ったって、生返事しかしてくれない。  この過程では、ママは大事に育てられたネコみたいな存在だ。  いつもの私だったら、ここで愚痴の一つでも漏らすだろう。  だけど、今は内心ガッツポーズをしている。  だって、急いで作業しないといけない今だったら、パパは逃げられないから。
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