転勤族から引っ越したい

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「ねえ、パパ」 「なんだ?」 「ちょっとお話しない? 私の進路について」  パパの眉が、露骨に歪んだ。 「いつも言ってるだろ。好きなところにいけばいい」 「そんなんで納得できるわけないじゃん。私立に通えるお金はあるの?」 「家の懐事情なんて、子供が気にすることじゃない」  いつも通りだ。  いつも通り、腹立つ。   「ねえ。なんでちゃんと話し合ってくれないの?」 「話し合っているだろ。好きにすればいいんだ。お前は自由にすればいい」  私の心がカッと熱くなる。  ほとんど無意識に、口を大きく開ける。 「それって、全然話し合ってないから!」  大声を出すと、パパは大きく目を見開いた。 「ねえ、そんなに私のことが邪魔?」 「そんなわけないだろ」 「じゃあ、なんで話を聞いてくれないの?」  パパはすぐに答えない。  今の私に、1秒も待つ余裕はない。 「全然、私の気持ち考えてないよね、それ」  吐き捨てるように言うと、さらに空気が冷え込んでいく。 「私が話したいって言ってるんだよ? それを無視してるじゃん。何が私のためなの!? バカじゃないの!? そんなの、全然カッコよくないからっ!」 「ねえ、私、ついていかない方がいい?」  自分のことながら、ズルい言い方だ。  わかっている。  でも、言わずにはいられなかった。
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