転勤族から引っ越したい

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 私は、パパの顔を見れなかった。  唇が急激に乾いて、息が苦しくなった。  手元には、片付け途中のアルバムがあった。  気を落ち着けせるようにページをめくると、楽しそうな家族写真が目に入った。 「俺は不出来な父親だからな。下手なアドバイスは逆効果になると思ってな」 「そんなこと……」  言いたいことがいっぱいあった。  ありすぎて、頭が混乱している。  それなのに、パパはさらに話を続けてくる。 「だから、俺にできるのは、環境を変えさせてやることだけだった」  また、衝撃的な事実が投下された。 「え……」 「お前がイジメから逃げられるように、転職したんだよ。転勤が多い会社にな。お前には転勤とだけ伝えた」  頭が混乱してくる。  どんでん返しばかりで、思考が全く追いつかない。  「ナニソレ」 「だって、お前は変に頑固だし、感情的だし、すぐにトラブルを起こすだろ。頻繁に環境を変えた方がいいと思ってな。それに、寝言で『てんこうしたい』って言ってた」 「……ナニソレ」  話を聞くたびに、胸が熱くなって、頭が痛くなってくる。  とりあえず、絶対に言わないといけないことはある。  「ねえ、一つだけ言っていい?」 「なんだ?」 「なんで、寝言を信じるの」 「寝言は本心だろ」  一拍あけて。 「はああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
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