1-1 少年は獅子の如く

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 血を抜きロープで縛った獣の身体を、近くの川原に張っていたキャンプ地へと二人がかりで運ぶ。毛皮を傷つけるのは本意ではなかったが、これほどの大きさの獲物を無傷で運ぶのは骨が折れる。肉を得られれば十分だ。  改めて見ても立派な獣だ。全長はカイが両手を広げた幅よりもずっと長い。川原でその腹を捌く彼は、ふと手を止めた。 「なにかあるぞ。なんか硬いもん」 「骨じゃないの」 「いや、違う」  胃の中に突っ込んだ手は、小さく硬いものを握っていた。川の水で手をすすぎ、石の上に腰を下ろす。 「これあれだ、ネックレスだ」  そばに寄ってきたサクに、銀色の細い鎖が連なったそれを見せる。鎖の途中には菱形の台座があり、青く透き通った小石がはめ込まれている。ネックレスは陽の光を反射してきらきらと輝いていた。 「首にかけるものだよね」 「ああ。爺さんからちらっと聞いたことがある」  受け取ったネックレスを珍しそうに見るサクに、カイは頷いた。 「じゃあ、これをつけた誰かが食べられたってこと」 「だろうな。消化されずに残ったんだ」少し考えて口を開く。「それが俺の手に渡ったんだから、奇跡的だよな」 「旅してた人かな」 「旅するやつなんて、俺たち除いてそうそういないぜ。どっかの村に住む人を襲ってから、こいつがここまで来たんだ」腹を裂かれた動かぬ獣を指さす。 「それなら、村に返した方がいいよね」  驚いて、カイは立ったままでいるサクを見上げた。当たり前の顔をしている彼に思わず笑いかける。 「確かに、家族がいるかもしれない。村探しに行くか」  どうせ終わりも当てもない旅路だ、小さな目標でもないとやってられない。 「おまえがいると、旅が随分楽しいよ」  笑って言うと、相棒は怪訝な表情をした。
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