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すぐさまぴたりと音は止んだ。原因は不明だが、二人はとりあえず安堵する。だが更に驚くことに、機械からは声が流れてきた。
「……もしもし?」
聞き覚えのない若い女の声のように思え、カイとサクは顔を見合わせる。再び、もしもしと同じフレーズを繰り返し、「どなた?」とその声は続けた。
「なんだよ、俺全然わかんねえぞ」
「僕にも分からないよ。……もしかしたら、どこかに繋がったのかもしれない」
「どこかって、どういうことだ」
「だから、つまり、電話が繋がったってこと。今誰かが、この携帯電話に向けて話をしてるんだ」
「そんなわけあるかよ、何十年前の機械だと思ってんだ」
「そう言われたって」
言い合う二人の声を、女の声が遮った。
「ちょっと誰、いたずら? いたずらなら切るよ」
「あ、えっと」咄嗟にサクは携帯電話に向けて声を発していた。「いたずらじゃなくて」
「番号が表示されてないんだけど、なにこれ、非通知?」
非通知の意味が分からず戸惑うサクの横で、「そっちこそ誰だ」とカイが口を挟む。
「そっちこそって、知らないでかけてるの。やっぱりいたずら?」
「だからいたずらじゃないっての」
「僕はサクで、こっちはカイ。……一体何が起こってるんだ」
自問しつつサクが返事をすると、相手も口を閉ざしてしばらく考えている風だった。
「何がって、そっちが私に電話をかけてきたんでしょ」
「拾ったんだ、これ。えっと、携帯電話。それで触ってたら、音が鳴って、声が聞こえて」
「拾った? 私の番号を知ってる誰かの電話ってことなのかな……。どこで拾ったの」
「学校。……廃墟だけど」
「廃墟?」相手は一段と困惑した声を発した。
戸惑いつつも、それは互いのことだと理解したのか、相手は通話を切らずに会話を続けてくれた。興味を刺激されたのかもしれない。少しずつ説明し合う中で、彼女はミオと名乗った。カイとサクの間の年齢で、学校に通う普通の学生だと言った。驚いたことに、彼女はシェルターもリーパーという単語も知らないという。
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