1-13 少年は獅子の如く

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 すぐさまぴたりと音は止んだ。原因は不明だが、二人はとりあえず安堵する。だが更に驚くことに、機械からは声が流れてきた。 「……もしもし?」  聞き覚えのない若い女の声のように思え、カイとサクは顔を見合わせる。再び、もしもしと同じフレーズを繰り返し、「どなた?」とその声は続けた。 「なんだよ、俺全然わかんねえぞ」 「僕にも分からないよ。……もしかしたら、どこかに繋がったのかもしれない」 「どこかって、どういうことだ」 「だから、つまり、電話が繋がったってこと。今誰かが、この携帯電話に向けて話をしてるんだ」 「そんなわけあるかよ、何十年前の機械だと思ってんだ」 「そう言われたって」  言い合う二人の声を、女の声が遮った。 「ちょっと誰、いたずら? いたずらなら切るよ」 「あ、えっと」咄嗟にサクは携帯電話に向けて声を発していた。「いたずらじゃなくて」 「番号が表示されてないんだけど、なにこれ、非通知?」  非通知の意味が分からず戸惑うサクの横で、「そっちこそ誰だ」とカイが口を挟む。 「そっちこそって、知らないでかけてるの。やっぱりいたずら?」 「だからいたずらじゃないっての」 「僕はサクで、こっちはカイ。……一体何が起こってるんだ」  自問しつつサクが返事をすると、相手も口を閉ざしてしばらく考えている風だった。 「何がって、そっちが私に電話をかけてきたんでしょ」 「拾ったんだ、これ。えっと、携帯電話。それで触ってたら、音が鳴って、声が聞こえて」 「拾った? 私の番号を知ってる誰かの電話ってことなのかな……。どこで拾ったの」 「学校。……廃墟だけど」 「廃墟?」相手は一段と困惑した声を発した。  戸惑いつつも、それは互いのことだと理解したのか、相手は通話を切らずに会話を続けてくれた。興味を刺激されたのかもしれない。少しずつ説明し合う中で、彼女はミオと名乗った。カイとサクの間の年齢で、学校に通う普通の学生だと言った。驚いたことに、彼女はシェルターもリーパーという単語も知らないという。
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