1-13 少年は獅子の如く

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「防護服? そんなのなくても生活できるよ。てか、どこから電話してるの」 「どこから……」サクはカイに視線を向けるが、カイも自分たちの現在地をうまく説明することなどできない。反対にミオの住む街の名も聞いたことがなかった。 「ウイルスが流行ってない土地があるってことか」  カイの台詞に、サクも無理に納得するしかなかった。シェルターではリーパーは世界的に流行し人口を激減させたと聞いていたが、ウイルスの脅威を免れた場所が実はあったのかもしれない。そこでサクはふと思い立った。 「それか、カイが言ってた別の世界っていう所かも。ちょっと違うって言ってた世界」  サクに語って聞かせたのはカイ自身だが、それでも存在も確認できない世界の人間と会話ができるだなんて信じ難い。推測を伝えるとミオは可笑しそうに吹き出した。 「聞いたことある、並行世界っていうの。正直、本当にあるとは思えないけど。あったとしても、電話が通じる?」 「それは、そうだけど……」 「でも、会話ができてるのは本当だしね。ウイルスで人がシェルターに追いやられたって聞いたことないけど、私にそんな嘘つく必要なんてないし」  深夜まで話をする中で、二人はミオの住む場所が随分と平和な所であると知った。もし世界のどこかに彼女の暮らす場所があるなら、ウイルスのない景色とやらを見てみたい。 「よし、行ってみようぜ、ミオの住んでるところ。時間はあるんだ。世界中探せば何とかなるだろ」  いつもの豪快なカイの台詞を聞き、サクはその非現実さに呆れ顔をしたが、それでも良い考えだと思ったのか一つ頷いた。 「面白いじゃん。是非きてよ。案内してあげる」  電話越しにミオが明るく笑い、旅の次の目標が決まった。
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