2-2 夢幻と窮地

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 リーパーへの耐性の強さは、個体がどれだけ耐性遺伝子を有しているかで決まる。それは生まれつきのものであり、後天的に得て耐性値を上げることはできない。  局は差別の意図はないとしているが、シェルターに住む者は耐性の強さでランク付けが成されている。最も耐性のある者がS、その下はAと続き、最低ランクはFである。住民の約半数は平均値のCが割り振られている。超耐性はリーパーの影響を全く受けず、耐性遺伝子とは別の素因があると見込まれているため、ランク自体が存在しない。  生まれた時点の検査でランクが決定され、B以上は強制的に偵察部隊に配属されてシェルター外での活動が可能なように訓練が施される。  自身の努力で変更することのできないランク付けに、被差別意識を抱く低ランクの者は少なくなかった。偵察部隊員ならまだしも、一生を地下で過ごすCランク以下の人間にランク付けなど必要ないと主張する住民もおり、逸脱した行動から処罰を受ける者も稀に見られる。  リーパーは特にヒトに大して強い毒性を発する。そのため、高ランクの者はヒトでなく獣に近いのだと信じて敵視する者の集団は、抵抗遺伝子否定派と称され、REGと呼ばれていた。  REGの犯行と思しき、高耐性の偵察部隊員が死体で見つかる事件が稀に起こる。連中は巧妙にシェルター内に潜み、自分たちの意思を表す機会を着々と狙っているのだ。だからシズはREGの単語を用いて周囲を牽制し、最も狙われやすい超耐性のサクにその話を持ち掛けたのだ。  サクは、カイを殺したのは防護服を着た人間、つまりシェルターに住む者の犯行であると同時に、超耐性の自分を狙ったREGの仕業であると考えていた。シズは恐らく、サクが戻ってきた理由はサクといた協力者に関係し、その人物は既に死亡していることに気付いているだろう。REGに食いついた彼を見て、忠告をしたというよりも、サクとREGとの因縁を確認したに違いない。仇討ちという目的はきっと悟られている。  邪魔さえされなければそれでいい。サクはそう思った。上官から情報が得られなくとも、いずれ自分でカイを殺した相手を見つけ、この手で殺す。シェルター内の極刑は追放だが、殺人を犯したことで追放されたとしても、願ったり叶ったりだ。目的を達成できれば、ここにいる必要はない。  どうにかして方法を見つけなければ。サクは踵を返して射撃場に歩き出した。
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