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イブキが合図をすると、岩陰から防護服を来た人間が歩み出た。サクと同じ型の銃を握っている。目を見張るサクの前で脱ぎ取ったヘルメットの下から、男の顔が現れた。
「彼が、カイを殺した張本人だ」
あの時、咄嗟に撃ち返した相手の顔がそれだったか、サクにはわからない。ヘルメットの向こうの顔を認識するには距離があり過ぎた。
「おまえが、カイを殺したのか……」
冷たい夜風が髪を揺らす。その風に乗ったサクの言葉に、男は一つ頷いた。四十代ほどの短髪の男で、どこにでもいそうな印象の薄い平均的な顔だちだった。シェルター内ですれ違っていたとしても、記憶に残らない。
「巨大な異形が暴れていて、きみたちが戦っているのを陰から見ていたんだ。そこで、片方が任務中に行方不明になった超耐性の少年だと気が付いた。……あの髪の赤い男の子には、悪いことをしたよ」
銃を握りかけた手を止めた。男の握るショットガンの照準が、しっかりこちらを捉えていたからだった。
「彼の命は、サク、きみに預けるよ」
岩に預けていた背を剥がし、イブキが言う。
「三日後にこの場所で、答えを聞かせてくれ。彼を生かしてシェルターに残るか、仇を討って俺たちの仲間になるか」
何も言えないサクを残し、二人は背を向けて夜の中に消えていった。
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