2-12 夢幻と窮地

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 イブキが合図をすると、岩陰から防護服を来た人間が歩み出た。サクと同じ型の銃を握っている。目を見張るサクの前で脱ぎ取ったヘルメットの下から、男の顔が現れた。 「彼が、カイを殺した張本人だ」  あの時、咄嗟に撃ち返した相手の顔がそれだったか、サクにはわからない。ヘルメットの向こうの顔を認識するには距離があり過ぎた。 「おまえが、カイを殺したのか……」  冷たい夜風が髪を揺らす。その風に乗ったサクの言葉に、男は一つ頷いた。四十代ほどの短髪の男で、どこにでもいそうな印象の薄い平均的な顔だちだった。シェルター内ですれ違っていたとしても、記憶に残らない。 「巨大な異形が暴れていて、きみたちが戦っているのを陰から見ていたんだ。そこで、片方が任務中に行方不明になった超耐性の少年だと気が付いた。……あの髪の赤い男の子には、悪いことをしたよ」  銃を握りかけた手を止めた。男の握るショットガンの照準が、しっかりこちらを捉えていたからだった。 「彼の命は、サク、きみに預けるよ」  岩に預けていた背を剥がし、イブキが言う。 「三日後にこの場所で、答えを聞かせてくれ。彼を生かしてシェルターに残るか、仇を討って俺たちの仲間になるか」  何も言えないサクを残し、二人は背を向けて夜の中に消えていった。
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