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映画が終わった。時間は11時半になろうとしていた。
エイプリルフールが終わるまであと30分だ。
僕はトオルに声をかける。
「わかったかもしれない。最後の嘘」
「そうか。なら、聞かせてもらおうか」
にやりと笑うトオル。京と介六は僕が口を開くのをじっと待った。
「時間がずれている」
僕はさっき考えたことを順序立てて話した。
「なるほどな。だから、そう考えたわけか」
「ああ」
トオルは表情を崩さない。何を考えているのだろう。それはすぐにわかった。
「違う」
「えっ」
「時間はずれてない」
違うのか。
「なんなら、時報に確認してみれば、いいさ」
それはもう終わりだった。
時間は無常にすぎていき、エイプリルフールが終わった。
「…降参だ」
「まあ、難しかったか」
トオルは慰めてくれたが、正直悔しかった。
「惜しいところまで行ってたよ。推理は合ってた」
「なら、なんで。間違えたんだ」
「ずらしたのは時間じゃない。日付だ」
日付? 僕がきょとんとした表情をしていると、トオルはスマホを見せた。
スマホの画面には今日の日付が表示されていた。これはネットサービスを利用したもので、それが偽りでないことを証明していた。
「4月1日 月曜日 00:02」
そういうことか。僕が4月1日だと思っていた日は、3月31日だったわけだ。
「月の変わり目なら、わかりにくいと思ったんだ」
「エイプリルフールならではってことか。ああ、やられた」
僕が今日を4月1日だと錯覚したのは、スマホの日付がそうだったからだ。完全にトオルにしてやられたわけだ。
「うん、いいね」
「初めてそんな顔を見ましたぞ」
京と介六は僕の気も知らないで、楽しそうに笑っている。
トオル、京、介六の顔を見て、言った。
「おまえら…最悪だ!」
その声はエイプリルフールの空に響いていった。
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