3人が本棚に入れています
本棚に追加
集合場所であるトオルのマンションに着いたのは、ちょうど10時半だった。
他のメンバーの京と介六は少し前に到着したらしく、今は食材の買い出しに行っているそうだ。
来て早々、昼食をご馳走になるのはしのびないので、片づけぐらいは自分がしよう。そう思いつつ、エレベーターが目的の階に着くのを待っていた。
トオルは寝不足なのだろう。目の下に隈ができていて、大きな欠伸をしていた。同い年なのに横顔は僕よりも年上に見える。いつもは肩まで垂れ下がっている黒髪を、今日は後ろで括っていた。顎の髭は綺麗に整えられていて、だらしなさを感じさせない。
唐突にトオルが口を開く。
「そういえば、弟さん元気してるか?」
「え、うん」
反射的に答えたが、ふっと疑問が湧いてくる。
「そんなに仲良かったっけ?」
「つい先日な。ゲーセンで会ったんよ。顔が似てるから、おまえと間違えた」
僕はよく弟と間違えられる。自分自身は似ていないと思っているのだが、他から見れば瓜二つのようだ。
〈ポーン〉
エレベーターが着いた。機械的な音とともに両扉が開く。トオルが先に進み、それに続く。
マンションの様子は前に来たときと比べて、あまり変わっていなかった。外観はボロボロで人が住む場所としては不衛生に思えるが、中は驚くほど綺麗だ。どうして外観だけが汚れたままなのだろう。ここに住んでいるトオルですら知らないらしい。
トオルが玄関の扉を開ける。京と介六の靴はなかった。
「まだ帰ってきてないみたいだね」
「もうすぐ、来るはずだ。中で待ってようぜ」
なら、今のうちに聞いておこうかな。
最初のコメントを投稿しよう!