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午後からは介六の提案で、テレビゲームをすることになった。
選んだゲームはみんなで遊べるパーティゲームだ。本当は別のゲームもする予定だったのだが、あまりに熱中してしまい、夕方までぶっ通しでやってしまった。終わったあと、僕たちはへなへなと床に倒れ込んだ。スライムのように蠢く僕たちの中で最初に立ち上がったのは優勝したトオルだった。
「おーし、飯を作るから、そこで寝てな!」
「「「あーい」」」
覇気のない返事をする。視界に時計が映る。
もう6時なのか。
「ちょっと風に当たってくる」
そう言って、ベランダに向かった。
ベランダから見える景色は、殺風景で夕日が嫌というほど照らしてくる。ずっと同じ体制だったからか、身体が固くなっている気がする。身体をほぐすために軽いストレッチをしていると、介六がやってきた。
「僕も、いいですかな」
「もちろん」
介六も僕と同じように身体を伸ばす。
「あんなにゲームしたのは、久しぶりだね」
「ですな。中学校以来かもしれません。ところで、最近アニメは見ますかな?」
「あー、介六に勧められたやつを見終わってからは、まったく。面白いのがあったら教えてよ」
「承知しました」
介六がスマホを取り出したので、横からのぞき込む。
その時、壁紙が見えた。これは…。
服装が特徴的なデザインをしていたので、すぐに『明かさぬ恋心』のキャラクターたちだとわかった。だけど、それは実写版だった。
介六はアニメや漫画の実写化を嫌っていた。批判したり、叩いたりはしないけど、進んで見に行こうとはしなかった。そんな介六がこの壁紙にしているのには、違和感があった。
「介六、これは」
「はい、そうです」
これが介六の2つ目の嘘のようだ。
「ちょっとわかりづらかったですかね」
「いや、実は介六がテレビゲームを提案したときから、何か仕掛けてくるんじゃないかと思って、警戒はしてたんだ」
「流石ですね」
これで残る嘘は、トオルの2つの嘘だけになった。
今までの傾向から嘘を見つける機会はちゃんとあるようだ。怖いのは、すでに見逃している可能性だ。そうなったら、嘘を指摘するのは難しくなるだろう。
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