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第2話 女神のスキル
助けてくれたシスターはアリスと名乗った。
修道服で体形が隠れているが、細くて背が低くて幼い印象だ。17歳だと言っていた。
「助かりました~高いところが届かなくて・・」
「アリスさんはキレイ好きなんですね」
ぼくは泊めてもらったお礼に掃除を手伝っていた。天井の隅にはったクモの巣をホウキで取り除く。届かないならしなくていいのでは・・とも思ったけど。言わずに黙っておく。
次に教会の裏に出ると、畑が広がっていた。他に薬草と思われるものが植わっているようだ。
「手伝ってもらえると非常に助かります~」
アリスさんと一緒に、土に埋まっているイモを掘り出す。地味に大変な作業だ。
取ったイモは食卓に並べるらしい。そういえばアリスさん以外、人を見かけない。
もしかしていつも一人でやっているのだろうか?
「他に人はいないんですか?」
「以前は数人いましたが・・まあ、地味なお仕事ですしね。意外と大変だと分かるとすぐ辞めてしまって・・」
俯いて答えるアリス。教会は寄付金だけだとやはり生活が苦しいみたいだ。
強い突風が吹き荒れた。アリスの頭にかぶさった布が取り払われる。
金色の髪がさらさらと風で揺れ、ダークグリーンの瞳がよく見えた。
「女神様?」
髪の色と瞳の色が女神さまと同じに見えた。それと雰囲気が少し似ていたから。
「な、何をいってるのですか?そんな訳ないじゃないですか」
アリスは顔を赤くした。
「ご、ごめんなさい?夢に見た女神さまと似ていたから・・」
****
「そうだったのですね。夢で女神さまにお会いしたと、金髪はこの町では割と普通ですよ。急にそんなこと言い出すから驚きました」
女神に会った夢は荒唐無稽だと思ったので黙っていたのだ。
「スキルですか・・ファンティ様は癒しの女神様ですから・・おそらく、癒し系のスキルでしょうか」
教会内で、椅子に座り話をしているとバン!と扉が開かれた。
「た、助けてくれ・・教会では治療をしてくれるんだろ・・」
入口には皮の鎧を着た青年が、壁に寄りかかっている。見ると流血がひどいようだ。
青年はずるずるとその場に倒れてしまった。
「大変!急いで手当しないと・・グリーンさん私、準備をしてきますから彼を見ていてください」
アリスが慌てて奥の部屋に入っていった。
ぼくは自分の手を見た。スキルが癒しの力ならもしかして・・。
ぼくは試しに、青年の右肩の怪我の部分に両手をかざしてみる。
すると、頭から言葉が紡ぎだされた。
『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』
手のひらから淡い光が放たれて、青年の傷がみるみる塞がっていく。酷い傷は見た目は治ったようだった。ぼくは急に脱力感に襲われて床にへたりこんだ。
パタパタと、薬箱を抱えてアリスが戻ってきた。
「これから、応急の手当てをしますねって・・あれ?」
アリスは、床に座り込んでいるぼくと青年を交互に見る。
「もしかして何かしました?」
「多分、しちゃいました」
ぼくは、とんでもないスキルを手に入れてしまったみたいだった。
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