第5話 女神さまにお願い

1/1
前へ
/38ページ
次へ

第5話 女神さまにお願い

「すみませーん。治療してもらいたいんですが」 女性の声が教会に響いた。 次の日も一人、また一人と毎日誰かしら来るようになった。最初は少し警戒して訪れる人がほとんどだ。 「おい、本当に治してもらえるんだろうな?こんなに安く?」 教会の中に入り、キョロキョロ辺りを見回す男性。がっしりとした体つきで、背中に大剣を背負っている。肩に包帯をぐるぐる巻かれていた。 「最初は疑っていたけど、町の人に聞いたから大丈夫よ」 茶色いローブを被り、大きい杖を持った女性が男性に寄り添っていた。 「座ってもらっていいですか」 ぼくは男性に長椅子に座るように促した。 何だか疑いの目を向けられているけど・・。 「料金は一律で銀貨2枚です。心配しなくても大丈夫ですよ」 ぼくは笑顔で話す。 「実は・・怪我の治りが遅くてな・・隣町のミルドスで治してもらおうと思っていたんだが、ここでも治せると聞いたから」 思っていたより傷が深いらしい。 動けないと仕事が出来ないので、このままだと金銭的に苦しくなる為治療に来たみたいだった。 「すぐ終わりますよ」 ぼくは意識を集中した。 『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』 淡い光が、傷の部分を包んでいく。傷がみるみる癒えていった。 「おお!痛くない!」 男性は恐る恐る肩を動かした。包帯を外すとキレイな皮膚が見える。 「こりゃすげえ!疑って悪かったな」 ぼくは銀貨4枚を受け取った。 「あの・・ちょっと多いんですけど」 「気持ちだよ、気持ち、とっときな!」 ** 「むう~」 患者が去ってから、アリスが頬を膨らましていた。どうしたのだろう。「理由を聞いても何でもない」って言って教えてくれない。何でもない訳ないのだけど。 「グリーンばっかりずるい」 アリスが呟いた。 「ん?何が?」 「何でもない」 何でもいいけど、機嫌を直してほしい。アリスはもくもくとお掃除をして、畑仕事をしていた。 「ぼくが何か悪い事をしたのなら謝るから!」 「グリーンは何もしてない。ちょっと私がイライラしてるだけよ」 ***** 私は、自室のベッドの上で私は毛布にくるまっていた。分かってる。グリーンは良い事をしているって。私が何にも役に立っていない気がして、イライラしているの。 だけどこんな事言えるわけないじゃない。 「私って心の狭い人間だったんだなぁ・・」 ベッドで毛布を握って顔をうずめた。 私も魔法が使えたらなぁ。 「グリーンばっかりずるいです。女神様、私にも何か力を下さい」 私は両手を組んで、初めて自分の事をお祈りしてみた。 何だか段々欲張りになっている気がするけど、気のせいだろうか?
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加