首吊りジョン

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 ***  で。 「……フラグ回収お疲れ様でーす」  ジンがやけっぱちになって呟いた。とある倉庫部屋の前、屋敷に住んでいる家族と使用人たちが大量に集まってごったがえしている。  僕は顔をひきつらせて中を覗き込む。鼻孔を突き刺す独特な匂い――排泄物と、死臭。もう慣れてしまった。見れば部屋の中心で、大柄な男が首を吊っているではないか。  それもよりにもよって、ちょっと前に自分たちに鍵を渡してくれた男が。 「あれ、テッドさん、ですか?」  僕は恐る恐る尋ねると、彼に駆け寄っていた四兄弟が揃って振り返った。やっぱり眼鏡がないだけで顔がよく似ている。最初に紹介された時にはいなかった五男のリヴァルの姿もあった。 「間違いありません!」 「テッド兄さんです、ああ、どうしてこんなことに!」 「お願いします探偵さん、犯人を見つけてください!」 「実は、この屋敷の前の川の橋が崩落したとかで、すぐに警察が来てくれないんですううう!」 「お、おう……」  気が遠くなった。ああ、探偵にバカンスなんて夢のまた夢だったと知る。本当に背筋が伸びる気持ちで事件捜査する羽目になるだなんて。やっぱり自分達には死神がついているのだろうか。  悲しむ兄弟たちを前に下手なことも言えず、僕はひきつり笑いを浮かべて言う他なかった。 「え、ええっと……詳しい状況を教えて貰ってもいいですかね?」  状況確認をして、さらに頭痛を覚えることに。  部屋のドアには、鍵がかかっていた。そして、僕も兄弟たちも数時間前にテッドと話していて、その後倉庫の鍵の貸し出し記録はないという。  まあようするに。  密室殺人だったわけである。よりにもよって。
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