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 ということは、やはり両親じゃないのか。彼らがここに来ている訳ではない。考えてみれば、父親も母親も、わざわざシロツメクサを摘んで花輪を編んで作るような、そんなキャラクターではなかった。  首を傾げながら私はポケットから鍵を出し、ドアを開錠した。少し考えてから花輪を手に取り、それを持って家の中に入った。  別荘の中は、空気が澱んでいた。長く誰もかき乱したことのない部屋の、埃っぽい、カビ臭い嫌な感じ。誰かが最近入ったとは思えないし、両親が最後に来たのはもう何年も前かもしれない。  薄暗い廊下に立ち、手にした花輪を見下ろす。指先には、シロツメクサの湿気を感じた。薄暗い中でも緑と白は鮮やかで、色が際立って感じられる。  誰の仕業だろう。近所の子供? シロツメクサがぎっしり茂る前庭は、柵で仕切られている訳じゃないから誰でも入って来ることができる。近所の子供が花輪を作って遊んで、できた花輪を置いていったのかもしれない。  もしそうなら、この別荘地にもまだ小さな子供がやって来るということだ。高齢化して過疎地に思える別荘地だが、結構まだ未来はあるということか。  花輪をリビングのテーブルに置いて、私は換気のために窓を開けにかかった。
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