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 二階には、家族が滞在する時に寝泊まりする部屋があった。二面に窓のある六畳間で、大きな本棚がある。本棚の空いた棚には、たくさんのコケシや民芸品の人形が飾られていた。大小のコケシ、和紙で作られた踊り子の人形、木彫りの熊に、マトリョーシカまで。祖母が集めたお土産物だ。その合間には、瓶の中に帆船が入ったボトルシップが飾られている。これは、祖父が作ったものだという話だ。いずれも子供の頃から変わらずそこにあって、今はすっかり埃をかぶってしまっている。  この部屋も窓を開け、掃除機をかけて、人形やボトルシップに積もっている埃も拭き取っていった。掃除機の音をゴーゴーと立てながら、夏休みにこの部屋で過ごしたことを思い出す。暑い日、午前中に網を持って虫を追いかけて走り回ったその後で、ここで畳に寝転がって、風に吹かれながら昼寝をした。ちょうどいい風が吹き込み、汗ばんだ肌を冷ましてくれる。風鈴がちりんちりんと鳴って、私はいとも簡単に眠りに落ちていった。そして目を覚ますと、庭でバーベキューの用意ができている。そんな記憶だ。  ふと、違和感を感じる。何かが聞こえた気がしたが、掃除機の音にかき消されて聞こえない。私は掃除機を止めた。途端に、壁の方から何かが走る音が聞こえた。
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