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出会い
「いーーとーー! 今日もすぐ帰るの? 時間あったら寄り道しない?」
授業が終わると同時に僕に声をかけて来たのは同い年の女の子、佐伯結奈。綺麗な黒い髪、身長は少し低く、明るく朗らかな性格で、誰からも愛されるような女の子だ。
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彼女を初めて見た時、彼女は大学の空き教室で友達と資料の整理をしていた。自分の資料ではなく、教授から頼まれた物。
「結奈また先生の資料整理手伝ってるの?」
「うん、誰もやりたがらないし!」
「結奈が直接頼まれたわけじゃないんでしょ?毎回結奈が全部やる必要ないよ!」
「でも皆んなやりたくなくて帰っちゃうし、先生困っちゃうでしょ?それにこの作業好きだし!」
みんながやりたがらない事を、文句一つ言わずに、むしろ好きだと言いながらする彼女の姿に僕は心惹かれた。
彼女に声をかけ、日に日に仲良くなり、彼女との距離は縮まった。彼女との毎日を過ごすうちに、彼女なら受け止めてくれるのではないかと思い、家庭の事、今の僕のしている事全てを話すようになった。
案の定、彼女は僕を卑下したりする事なく、ただただ優しく聞いてくれた。
彼女との会話はどこか心地が良かった。
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「うん、今日は予定があるからすぐ帰るかな。また今度誘ってよ!」
「分かった! じゃあ気をつけてね!」
「ありがとう! ばいばい!」
大学から出てすぐアプリを立ち上げる。
『こんにちは、今日は18時からで大丈夫ですか?』
顔写真の無い初期アイコンからのメッセージ。年齢も未表記。普段はある程度雰囲気の分かる人を選んでいたのだが、今日は予定の合う人がおらず、仕方なく何も分からない人と会うことになった。
『大丈夫です』
メッセージを返し、待ち合わせ場所へと向かう。
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