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「こんばんは。ゆいとくんで合ってる?」 「あっ、はい……」 「じゃあ行こっか」  何もない平日の夜8時。  僕、佐々木唯人(ささきいと)は今日も知らない男の人とホテルへと向かう。一緒に歩いてるこの彼は、ゲイ向けのマッチングアプリで今日知り合ったばかりの男。  当たり前のようにホテルに入り、部屋を選び、シャワーを浴びる。雑談を楽しむわけでも無ければ、お互いがどんな人かも分からない。それなのに、抵抗なく身体を重ねる。 「ゆいとくん、可愛い……」  吐息混じりに僕を褒めるその言葉だけに耳を傾ける。 (初めて会った、誰か分からないような人相手によく可愛いなんて言えるよな) なんて考えももう思いつかなくなっていた。 「また会おうね、ゆいとくん」  やる事を済ませれば、何事も無かったかのようにホテルを出て、そのまま帰りたくない家に足を向ける。  家に向かいながら、僕は彼の連絡先をブロックする。
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