1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「立って弾くようになってから音が弱々しいの。」
「ふーん。弾いてみて。」
私が演奏する姿を見た【彼女】は
「たぶんツメが寝てるからじゃない？」
と言って私のツメ(※ギターで言うとピック)に伸ばしかけた手を引っ込めました。
「幽霊は立体映像やからものに触られへんって前に自分で言うたのについ手が出てしもたわ。」
どんなに親しくなっても埋められない距離を感じて私は少し寂しかった。でも【彼女】は全然気にしていない様子で
「胴の面と右手首の角度が変わったから、ツメが倒れてしまって絃の上を滑ってる。」
と助言を再開。
「もっと親指でツメを押し出す感じや。」
何度か繰り返し弾くうちに音に張りが出てきた。
「あなたって教えるの上手だよね！」
「え？そう？」
【彼女】は照れ笑いを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう！