9 【彼女】のこと

2/2

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「緑地公園は市境にあるから祖母の家からも私たちの家からも少し遠いけど、音を鳴らすのにちょうどいいって美月と祖母のお気に入りの公園やった。事故に遭った日も2人で公園に行ってたの。」  美空先生は顔を曇らせながら続けた。 「フル電動自転車って分かる?モーターが付いていてペダルを漕がずに自走できるやつ。見た目は電チャやけど、ナンバープレートも必要やしモーターの出力に応じた運転免許も必要なの。でも近所に住んでた中学生のAくんが勝手に親の電動自転車に乗って、普通のチャリに乗った友達3人と一緒に遊歩道を蛇行運転や急ブレーキを掛けて暴走してた。公園の職員もやめるよう注意したらしいけどやめへんくて。結局、Aくんが惹き起こした交通事故に美月が巻き込まれてしまったの。電動自転車って原付並みの速度で走れるみたいで、ノーブレーキで美月と祖母に突っ込んだ電動自転車も時速40km近く出ていたみたい。救急隊員の話では時速40km近い車体にはね飛ばされたら、複雑骨折と全身打撲で起き上がるなんてほぼ不可能やけど、美月は自力で起き上がって安否確認のために祖母の元に駆け寄ったんやって。優しくておばあちゃんっ子やった美月らしいわ…。美月の死因は頭部外傷で、救急搬送されたけど助からんかった。」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加