3 出会い

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 三線の譜面は五線譜ではなく工工四(クンクンシー)と言って、「ドレミファソラシド…」は「合乙老四上中尺工…」と表記される。三線を弾き始めた頃はどの音で絃のどこを押さえるかを考えるのに苦労していた。  5月下旬の日曜日の昼に初めて自主練習したときのこと。我ながら、たどたどしすぎて全然曲に聞こえないなぁと反省しているところに【彼女】が現れた。 「いや、今のひっどい演奏やな!」 「ちょっと、突然失礼じゃないですか?下手だから練習するんですよ。あなた何様なんですか?」  恥ずかしかったのと、あまりの失礼さに、見ず知らずの相手につい反論してしまった。 「下手なんは素直に認めるんや。何様かって?うちは幽霊やで。うちの独り言聞こえてたんや!まさかリアクションされるとは!ハハハ!」  幽霊?!私に霊感なんてあったの?!  ゆるくウェーブしたダークブラウンのショートヘアに人懐っこい笑顔、セーラー服を着て白色のハイソックスにローファーを履いている【彼女】。
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