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 そのあとのことは正直あまり覚えていない。ブチギレてそこら辺のものを手当たり次第に投げる私を、ビビが必死に止めてくれたらしい。散らかった部屋の掃除をするビビを一日中眺め、夕食を取ると寝る時間になった。 「おやすみなさい、姫様」  ビビは、ふかふかのクッションに囲まれて横たわる私の手を握る。私は彼の、ふわふわの白い短髪を撫でる。 「姫様、どうかされました?」  ロウソクの火と月明かりに照らされて、くすぐったそうに目を細める彼の顔がぼんやりと見えて愛おしい。 「行かないで」  彼は微笑んで、 「では、姫様が寝付くまでご一緒しましょう」 「そうじゃないの」 「というと?」 「一緒に寝てほしいの、だめ……?」  ビビは目を丸くして、右手で顔を覆う。そして、 「姫様。いけません、私のような者と」  彼は、起き上がろうとする私の手をぎゅっと握るように、押さえつける。手枷の鎖が重い金属音を奏でた。 「どうして、私の言うことを聞けないの?」 「私は、貴方と寝床をご一緒することはできません」 「どうして!?」  私はビビの手を強く握りしめた。ジャラリと、月明かりに照らされた手枷の鎖が音を立てる。 「私は……奴隷ですから」 「だったら言うことを聞いてよ!」  いじけた子供のように、ぽんぽんと、寝床の隣を叩く。 「隣に、寝て、よ!」 「いけません、姫様。嫁入り前の体なのに……」 「だから! あんな男、好きじゃないって言ってんの!」  私は、ビビのことが……。と言いかけて耳まで真っ赤になる。 「姫様、どうしたのですか?」  ビビは熱でもあるのかと心配そうな顔をして、それから私のおでこに自分のおでこを、コツンとくっつけた。 「ん゛ぴっ!!!」  私の頭はショートした。
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