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 私がビビにお姫様抱っこされて塔のてっぺんに降り立つと、眼下にはたくさんの国民たちが集まっていた。 「姫様、歌ってください」 「姫様どうか!」  両手に枷を嵌められた大男が、豪華な椅子を担いできて目の前に置いた。ビビはその上に私を座らせると、不安そうな顔をする私の手を握りしめて 「姫様、がんばってください。うしろで見ております」  と言って、私の後ろに立った。国民たちのたくさんの目、そしてうしろにいる大臣、副大臣、ビビ、奴隷の大男の目に見つめられて、ごくりとつばを飲み込んだ。そして、深く息を吸い込んだ。  それは、歌というより魔法だった。私の旋律は国中に響き渡り、星が降るようにあたり一面が輝きだした。国民たちは皆、口からよだれを流し、恍惚とした表情で私を見つめていた。
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