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数か月後。誰かと一緒に過ごすことは、こんなにも自分の人生を明るくするのだと知った。塔に閉じ込められて歌うだけの日々に、楽しみができた。
手元の鈴を鳴らすと、扉の外で待機しているビビが来て、騒がしく喋りながら世話を焼いてくれる。私は、朝起きるとすぐに鈴を鳴らし寝るまでずっと彼と一緒に過ごした。もちろん、今日も。
「姫様。今日のおやつはクナーファですよ」
「まぁ、チーズ味じゃないの。さすが私の好みがよく分かってるわね」
「お褒めに預かり光栄です」
フォークで刺して口元に運ぶ。サクサクとした触感が心地よい。でも
「美味しくて困る」
「明日からは、まずく作りましょうか?」
「そうじゃないの」
おなかの肉をつまむ。私、ビビに会ってからどんどん肥えている。顔が良くて料理上手で尽くしてくれて、最高の従者だ。
「も~~! こんなにおいしいおやつを毎日食べたら、太っちゃうわ!」
「別にいいじゃありませんか」
何だそんなこと、と言わんばかりにビビはクスリと笑った。
「太った方が声を出しやすくなって、歌いやすいですよ」
しかし致命的な欠陥があった。彼はデリカシーがなかった。
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