あの子は鳴けないほととぎす

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『誰もいない音楽室からピアノの音がするらしいよ…』 ベタな怪談を得意げに話していた友人を深く恨んだ。 音楽室は基本、吹奏楽部が使っている。 我々、人数が一桁しかいない合唱部は先生用の譜面台を一つ借りて別室で練習をしている。 そう、音楽室からとって来るのは先生用の譜面台一つだけ。 四月の部内の係決めでなぜこの係を選んでしまったのだろうか。 「私、運悪すぎじゃない?」 薄暗く人の気配の無い廊下にやたら響く。 「ぽた…ぽた…」 「ひいいいっ!」 思わずのけぞり譜面台が手から滑り落ちる。 鏡に薄暗い間抜けな顔が映った。 水道の栓が閉まってなかったようだ。 「マジでふざけんな…」 音楽室への足取りがどんどん重くなるのを感じた。
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