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「わー豆腐ドーナッツだって! 美味しそう」
店先ではためく幟に、箱崎が声を上げる。
やっぱりコイツ学校サボりたかっただけだろ、なんて思いながらも、普段は見せないその素直な表情に、俺の心臓は落ち着かない音を立てる。
店先から覗いてみると、どうやらもう営業しているようだった。
「お弁当もある。買っていって休憩所で食べようよ」
「絶対、休憩所までだからな」
俺はズリ落ちできたギグバッグを背負い直す。
「わかってるって」
豆腐ハンバーグ弁当を持ってレジに並ぶと、店員のおばちゃんが胡散臭げな視線をこちらに向けてくる。
こんな時間に高校生が……。しかもこの辺の制服じゃないし……。
会計を終えると同時に逃げるようにして表に飛び出してから、俺は自分自身に対して舌打ちをする。
何ビビってんだ、俺。
対する箱崎は全く気にする様子もなく、のんびりと商品を選んでいて、余計に俺を苛立たせた。
箱崎にも変わらぬ視線を向けているおばちゃんに、「どうせロディの偉大さも知らず、つまんねー人生送ってきたんだろうに」なんて、心の中で八つ当たりじみたセリフを吐く。
ホクホク顔で店から出てきた箱崎は、俺の顔を見るなり紙袋を差し出してきた。
「付き合ってくれたお礼に、1個あげるよ。豆腐ドーナッツ」
箱崎に奢ってもらった豆腐ドーナッツは、優しい甘さでなんだか懐かしいような味わいだった。
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