それでも道は続いてゆく

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「ねえ、あなた達、学校は?」  急に背後からかけられた声に、俺はビクリと肩を震わせた。  振り向くと、髪が半分白くなったおばちゃんが、豆腐屋の店員と同じような視線を向けて立っていた。  俺は慌てて食い終わった弁当のゴミを鞄に突っ込んで立ち上がる。  これじゃ、自分で答えを言っているようなものだ。  おばちゃんは眉間に皺を寄せて近づいてくる。  それでも箱崎は涼しい顔だ。 「今日は休講なんです」 「どこの学校?」  更におばちゃんは詰め寄ってくる。 「スティングレイ高校です」  箱崎は淀みなくそう答える。  もちろんウチの学校はそんな名前じゃない。 「えっ? どこですって?」  おばちゃんが首を捻っている隙に、箱崎はこっちに向かって小さく頷いてみせると俺の手を取った。  おばちゃんの「嘘おっしゃい!」という言葉と、箱崎の「行くよ!」がほぼ同時だった。  気がつくと俺達はゆるい坂道を駆け下りていた。  吐き出す息と共に背中のスティングレイ(あいぼう)が楽しそうに飛び跳ねる。  胸の鼓動と共に箱崎の絹のような髪が踊った。    何処からか飛んできた茶色い鳥達が、囃し立てるように木々の間から鳴き声を上げていた。
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