商品開発部新規企画班緊急会議

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商品開発部新規企画班緊急会議

某大手下着メーカー商品開発部の新規企画チームが発足し、入社10年の乾麻衣子がこの部署のリーダーに抜擢された。 大手ならではの節度と気品をもって、その業界の代表として先頭を走っていた会社だったが、高級ブランドの輸入品や安い海外製造品の流入で、年々業績は悪化している。 そのため、老舗メーカーの重々しいイメージをブチ抜くような、インパクトのある商品の開発がこのチームに託された。しかし、人数やメンバーを見てもわかるように、会社としても、期待しているというわけではなさそうだった。 ちょっとした肩たたきのように見える。 10年務めている麻衣子は、積極的すぎる言動が祟ってお荷物状態だったのだ。 「乾さん、い・ぬ・い・さん。聞いてます?」 新規企画チームに配属された入社5年目の服部聡と一緒に、麻衣子は会議とは程遠いようなラフなミーティングをしていた。今は彼女の出した「緊縛ランジェリー」を審議中だ。 「聞いてるけど・・・」 「あのさ、乾さん、これ、このままじゃ企画通らないと思いますけど」 「なんで?」 「だってさ、うちの会社、すごい老舗だし、こんなあからさまなデザイン、無理でしょ?」 「でもぉ、結構セクシー系も出してるし、割とランジェリーは攻めてるよね」 「だとしても、この縄のやつはちょっとヤバいですよ」 「そっか。やっぱダメか」 「別のやつ考えましょうか。僕も嫌いじゃないんですけどね」 「このコンセプトははずしたくないんだよな。縛られるの、悪くないんだよ」 「まあ、そうですね。それはわかります」 いつもマイペースな服部は、出世欲が皆無で、のんびりと平社員を続けている。そろそろ主任を、そろそろ係長に、などと声がかかっても、のらりくらりとしているだけ。結局、この新規チームで、麻衣子のお守の役として飛ばされた。 二人は、しばらく単独脳内会議にふける。 服部が何か思いついたようで、さらさらとノートへ走り書きを始めた。マインドマップをどんどん広げていき、あっという間にA4用紙いっぱいになる。 SM、縄、緊縛、快感、毎日、週末、一人、プレゼント、裏テーマ、内緒、秘密、スペシャル、ペア?、カップル、同性、男性用、女性用、種類?、女王様監修、縄師、見えない、通販限定・・・ 「ねえ、乾さん。あからさまなデザインは無理だけど、矯正下着みたいにさ、縄の感覚をジワジワ感じる下着って良くない?」 「ん?」 「だからさ、縄そのものは結構時間も限られるけど、まあ鬱血とかさ。それに興味あるだけの人にはハードル高いじゃないですか。だから、サポート下着くらいの圧で、まあこれも健康に配慮した位置で取って、一日つけててもジワジワ来るくらい。あと、動くたびキュッってなる感じ。うぅ、なんか想像しただけで唾液出てきた。プレゼントだったらさ贈る側もそんな裏テーマあったらゾクゾクしそう。ね?そういうの、どうですか?」 「服部くん、やっぱり君は素晴らしい」 「うぅ・・・褒められたぁ・・・褒められるの好きぃ・・・」 「おっと、イクのはまだ早いよ。もうちょっと話詰めようか」 「はい」 会社を定時で終え、場所を変えて二人でミーテイングをつづけた。話の内容が社外秘なのと、そもそも発する言葉も大きな声では難しいので、緊急会議と称して、個室のある居酒屋へ入ることにした。 「まあ、ラインナップとしては、ショーツ、ブラ、とボディースーツですね。ショーツは股縄、ブラは難しいですね、肩ひもだと上腕のところに掛けにくいですし、胸の形を保つには胸を潰すような上下の縄は無理ですね。やっぱりボディスーツが一番いいかなぁ。スーツなら亀甲もできそうだなぁ」 「スーツはマスト。でもブラもつくる。肋骨のあたりまでサポートして、カップ付きインナーみたいな状態なら出来そうじゃない?後ろでクロスできる肩紐、あれを前でクロスさせて、胸の下の方を引っ張れるようにする。ここのラインに矯正みたいなソフトなサポートを入れてさ。そうだ、肌にあたるところは脱ぐと縄目の跡が付くタイプなんて良いかも。うっすらデコボコする感じ」 と、麻衣子は自分の上着を脱いで、胸の脇から指を滑らせて持ち上げた。シャツの上からでも麻衣子のたっぷりとした胸はしっかり主張をする。 「乾さん、ちょっといいですか?実際縄かけてデザイン決めません?どこにサポート入れるかわかるし、どの位置に跡がついたら楽しいか実感したいんで」 服部はカバンを開け、見えにくいところにあるファスナーを開けた。 「服部君、持ってるの?いつも?本当は忍者なんじゃない?」 「まあ、たまたまですよ。ぐふ」 「ねぇ、やりたいだけでしょ?」 「そんなことないですよ、仕事ですから。ニンニン」 服部はウキウキと麻衣子に縄をかけ始めた。 「ねぇ、これオーダー取りに来たらヤバくないの?」 「平気、いきなりは開けられないもん。来たら上着、かけたげるから、ね?」 そうして服部は素早く上半身に縄をかけた。 「乾さん。いぬいせんぱい。すごい、イイ」 「うん、さすが忍者服部君、すごく上手い。ちょっとヤバい」 「このラインでサポート入れられるか、技術部に確認しましょう。顔入れないんで写真、イイ?」 「いいよ、ここだけなら。でもさ、どうやって口説くの?これ、説明できる?」 「大丈夫です、技術部には二人、ご意見番がいますから」 「ほんと?」 「はい。さすが、と言うか、なるほどと言うか」 「だれなの?」 「部長と工場長ですよ」 「まじ?」 「マジです。ちなみに工場長は僕の縄の師匠です。来週みんなで会議しましょう。あ、部長は男性用のモデルに使います」 「やだ、この会社、変態ばっかじゃないの」 「乾さん、あなたがいけないんです。みんなに火を付けちゃったんですから。みなさんずっと隠れてたんですよ。でもスキルを発揮できるんで、喜んでました。まあ、忍びの者として、ですけど」 「うそぉ」 「本当です。だから、責任取って僕たちのこと、よろしくお願いしますね。ご挨拶がてら、もう一つ」 シュルシュル、ぎゅうぅぅ・・・ あ、あぁ・・・はっとりぃ・・・ こんなところでダメだってばぁ・・・ 乾さん、このまま上着、着てください。 場所変えて緊急会議、延長しますよ、ニンニン。 ぁ、はひぃ・・・ End
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