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うたっている、うたっている。
本当ならこういう話をする時、登場人物の名前は仮名にするか、A子とかB子みたいな表記をするべきなんだと思う。
ただ、今回ばかりはいろいろ考えて、彼女たちの本名で語らせて貰うことにした。理由は彼女たちの名前が、大きな意味を持つことになるからである。
これは、私がまだ小学生だった時のこと。
当時、確か私は十歳くらいで、四つ年下の妹・早織は六歳くらいとかそのへんだったはずである。自分で言うのもなんだけれど仲の良い姉妹で、二人で遊ぶことは珍しくなかったのだった。
ついでに、私の友達は妹にとっても友達だったし、妹の友達は私にとっても友達だったように思う。
幼稚園の友達と遊ぶ時も小学校の友達と遊ぶ時も、必ず姉妹は一緒だった。まあ、いくら仲良しだからといって、鬼ごっこで妹の友達の幼稚園児たちを相手に本気を出すほど私も馬鹿ではなかったのだけれど。
で、そんな私と妹だが。昔から似てない姉妹だとよく言われていた。それもそのはず、私は母親似で、妹は父親似。どっちも片親にがっつりに過ぎてしまったせいで、もう片方の遺伝子がどっか行ってしまっていたからだ。なお、これも自分で言うのもなんだが、私達のお父さんは結構イケメンで、妹もボーイッシュなイケメン風の女の子だった。彼女は顔のみならず、性格や体格、指の形までお父さんの方によく似ていたように思う。
特に一番似ていると思ったのが、妙な勘の良さだ。
『うわあああああああああああああああああああああああああああああああん!ああああああああああああああああああああああああああああん!』
普段はわりと気が強くて、むしろ男の子を泣かせるような強い女の子だった彼女。そんな彼女が何も起きていないのに突然泣いた事があり、みんなを大いに困らせたことがある。
その日はみんなで美味しい外食をした帰りで、楽しくおしゃべりをしながらドライブをしていたはずだった。突然泣き出した妹に“どうしたの”と尋ねると、彼女は鼻をすすりながら言ったのである。
『おばあちゃんが、いっちゃった……もうあえないって……』
この日。
そう、彼女が大泣きしたタイミングで、入院中の大好きなおばあちゃんが死んでしまったのだった。彼女は何百キロも離れたところにいながらそれを察知してみせたのである。
聞けば、お父さんも昔はそういう子供だったらしい。本人いわく“子供の頃だけ、何か守護霊みたいに守られてたんじゃないかな”とのこと。特に、お父さんも妹も、共通していることが一つあったのだった。それは。
『早織は、何か声が聞こえるってタイプみたいだね。死んだ人の声とか、人間じゃないものの声とかが。お父さんもそうだったなあ……』
彼女たちは、何かを声で聴いて察知するタイプの能力者だった。あるいは、そういうことをさせてくれる守護霊様がついていたと、そういうことらしい。
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