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それでいて、リビングをテレビゲームで独占してちょっと騒いでいても怒らない。気が強くてすぐ怒るうちのお母さんとは大違い!と思ったものである。
「うわあああああああああああああああああああああ待って待って待って待っておいていかないでえええええええええええええ!?」
「か、香織ちゃん!コースアウトしてる、コースアウトしてる!そのままだと溶岩にドボンだってば!」
「え、うそ、ま……ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!?」
「ああああ、言わんこっちゃない……」
「かおりおねえちゃんは、しょうらい、めんきょとらない方がいいとおもう!きっと、すぐじこをおこしちゃう!」
「……ああ、うん、真世ちゃん正論ありがとう……」
「どういたしまして!つぎはマヨがやる!やるの!」
幼いわりに口が達者な真世ちゃんにメンタルをボコボコにされつつ、己のゲーム下手っぷりに涙目になりつつ。その日もみんなでわいわい騒ぎながらゲームをしたのだが。
何故か、いつもはもっと騒がしいはずの早織が大人しい。亞世の妹の真世の方がずっと喋っている。早織は時々首を傾げながら、辺りをきょろきょろ見回しているようだった。
「早織、どうかしたの?」
私の問いに、彼女は小声で言ったのだった。
「ねえ、お姉ちゃん。……なんかきこえるきがするんだけど、さおりちゃん、いわないほうがいい?」
己が“聞こえたこと”をストレートに言うと、空気を壊してしまうことがある。早織は幼いながらにそれを学んでいたらしい。どうやら、この家でも何かが聞こえるということらしかった。ひょっとしたら、この家で死んだお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの声でもするのかもしれない。
もしそうなら、彼等はこの家の家族に伝えたいことがある可能性もある。とりあえずは。
「後で教えて」
そう返しておくことにした。伝えるべきかどうかは、彼女から聞いた後で判断すればいいと思ったのだ。
その日、ゲームで散々遊んだ帰り道。私は早織に、今日聞こえたものがなんだったのかを尋ねた。その結果。
「うたってた!なんかね、きらきらぼしとか、チューリップとか、いろんなうたをうたってるこえがした!」
でもね、と彼女は首を傾げる。
「ちいさなおとこのこのこえだったとおもうの。ねえ、あよちゃんとまよちゃんのうち、おとこのこ、いないよね?」
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