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*そして、下地の久美への検査が始まった。
検査内容は幻覚と幻聴があるかという内容だ。
それは、彼女のたくらみであったのだ。
「久美さん、検査を始めましょう」
「休憩室に今から行きますから」
「はい」
「久美さん、今から深呼吸をして。落ち着いてね」
「はい……」
*しかし、久美は不安でたまらなかった。
「ここは休憩室よね?」
「この部屋には私と久美さんしかいないでしょ」
「いえ、奥の時計の下に看護師さんが二人立ってこちらを見ています」
*実際に田中と佐藤は指示どおり、立っていたのだった。
「それが、幻覚というの」
「実在しないものがみえるのよ」
「じゃあね、田中さん、佐藤さん、もし、いたら返事をして」
「はい」
「久美さん、何も声は聞こえないはずでしょ?」
「いえ、看護師さんが「はい」と言いました……」
「それが幻聴というものよ」
「夜に壁の奥から声が聞こえてくるのでしょ」
「それなのよ」
「わかった。私が言っているのが本当でしょ」
「私が嘘をついているかしら?」
「いえ……」
「私は久美さんの味方よ」
「早く退院できるように頑張りましょう」
「そのかわり、今まで通り、しばらくは保護室での生活だからね」
「はい……」
*久美は保護室という閉じ込められた個室で過ごしていた。
そして、両親のことを思った。
お父さん、お母さん。ごめんなさい。心配しているでしょ
福山さん。助けてください。
夜が眠れません
部屋が狭くて暗くて壁から人の声がきこえたり、何かの物音がしたりします
本当に病気になってしまいました
恐いです
助けてください・・・
*福山は思い悩んでいた。仕事をとるか自分の意思をとるかであった。
彼は久美に想いを寄せていたからだ。そして、下地のいいなりになるのが、不本意であった。
僕はどうすればいいんだ
あの女医の操り人形なのか
だけど、あの新型MRIは……
僕と親友の片山とのやっとの想いで開発した物
*福山は当時のことを思い出した。それは昨年のことであった。
「おい、片川どうだ」
「ああ、もう少しだ」
「ここをこうやってあげれば」
「ほら、見て見ろ。福山、完成したぞ」
「実際に使用してみるぞ」
「おお、ここまで患者の状態を把握できるのか」
「ああ、これができたら多くの命が救えるぞ」
「俺達の夢が完成した瞬間だ」
*どうやら、片川は交通事故により亡くなったらしい。
片川、お前どうして・・・
*その様子を秘書の鈴美は見ていた。
「社長、また思い出しているのですか」
「あの頃を……」
「いや……」
「それより今日も打ち合わせに行ってくるよ」
「社長、頑張って下さい」
「ありがとう。鈴美さん」
*とある場所にて何かが起こっているようだ。
「わかっているわね?」
「はい」
「計画通り順調に進んでいるから、そのつもりでね」
「わかりました」
*白木川総合病院では久美が行方不明になっており、騒然としていた。
「下地先生、下地先生。大変です」
「どうしたの、田中さん?」
「久美さんが病院にいません……」
「どこにもいません」
「どうして、保護室の鍵は閉めてあったのでしょう?」
「はい」
「すぐ、ご両親に連絡して」
「はい」
*そこに、たまたま、福山が営業で現れた。
「先生、福山社長が打ち合わせに見えられました」
「困ったわね。どうするかしら?」
「田中さん、福山さんを通して」
「大丈夫ですか?先生、こんな時に……」
「いいから」
「わかりました」
*下地は仕方なく、福山に事情を話した。
「福ちゃん、打ち合わせなんだけど……」
「どうかされました?」
「実は久美さんが行方不明になって……」
「福ちゃんは心当たりはないわよね?」
「いえ、二回会っただけですから」
「そうようね」
「福ちゃん、私ねこのMRIいや福ちゃんのことを考えると夜も眠れないの」
「実は昨夜は内科の責任者の斉藤先生と……」
「いえ、やっぱりなんでもなかったの……」
「ごめんね、私はどうかなりそうなの」
「下地先生……」
「それより、警察に捜索願いを出した方がいいのではないですか?」
「そうね」
「そのとおりよ」
*下地は近くにいた田中に指示をだした。
「田中さん、ご両親を通じて警察に捜索願いを出すようにして」
「わかりました」
「下地先生、打ち合わせは今日は止めましょう」
「そうね。そうしましょう」
*一方で、久美は町を思い悩みながら、さ迷い歩いていた。
知らない人に助けてもらったけど、どうしよう
きっと病院もお父さんとお母さんに連絡しているよね
心配しているに違いない
でも、今更病院位は帰れないし……
どこに行けばいいのかな
とりあえず、家に行ってみよう
*久美が行方不明になっていたため、警察が実家まで来ていた。
あ、パトカーが来ている
逃げないと
どこか隠れるところがないかな
でも、どこに行っても見つかってしまう
やっぱり帰るしかないのね
そういえば、家の近くに新しく鉄道公園ができたみたいだから
そこで少しだけ休憩しよう
もう、こんな時間周りも薄暗い
昔の機関車が2台置いてあるのね
薄明りがあるって座るスペースがあるわ
行ってみよう
*そこには何かが待っていた。
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