明日に向かって

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明日に向かって

*とある場所にて 「事は順調に進んでいるかしら?」 「はい、指示どおりしておりますから」 「それならよろしいです」 *翌日になって。福山は病院へと向かった。 「鈴美さん、今日は僕と一緒に病院へ伺いましょう」 「はい」 「あら、福ちゃんいらっしゃい」 「もう、理事長の決済がおりたのよ」 「私の病院が購入することが決まったということよ」 「下地先生、久美さんに会わせて下さい」 「駄目よ彼女は精神状態が良くないから……」 「それに、MRIはどうでもいいの?」 「私と久美さんとどっちが大事なの?」 「ふふふ」 「僕は久美さんを守ります、MRIの契約はいたしません、その事をお伝えに参りました」 「社長、どういうことですか?」 「一体、これはどういうこと?」 「ええ、どうして福ちゃん」 「鈴美さんどうしたんだ。何を慌てているの?」 「社長、MRIを販売しなかったら会社は運営していけないじゃないですか」 「鈴美さん、君は最初から他の医療機関には営業をするように村原営業部長に指示していなかっただろう」 「実は昨日、そのことを村原君から聞いたんだよ」 *下地は困惑していた。 「鈴美さん、私はどうすればいいですか?」 「下地さんは黙っていて」 「それじゃ困るわよ」 「契約が成立したら利益の一部を私がもらうことになっていたじゃないですか」 「そういうことだったのか。鈴美さん」 「そうよ、仕方ないわね」 「これは復讐でもあるのよ」 「私は片川さんと交際していました」 「あのMRIは全てといっていいくらい、片川さんが開発したもの」 「社長は少しお手伝いしたくらいじゃない」 「どうして、ことあるばかりに二人の夢だと私に話していたの?」 「片川さんは昨年、交通事故で亡くなってから結局、MRIはあなたのものになった」 「あれは片川さんが作ったものよ」 「あなたが開発した物じゃないわ」 「そうだったのか、鈴美さん」 「福ちゃん、ごめんね。私はおつき合いしている人がいるの」 「そういうことよ。社長」 「最初から計画していたことだったのか」 「もういい、MRIの開発は白紙だ」 「下請け予定の業者にも私が謝罪する」 「それでいいのかしら」 「会社は経営していけないわよ」 「鈴美さん、僕はもう会社はどうでもいい」 「久美さんを守る」 「駄目よ。私が退院を許可しないから」 「でも、やっぱり退院させてあげる」 「だって報酬をもらえないのでしょ」 「鈴美さん」 *そこに居合わせた斎藤の口が開いた。 「そういう訳にはいきませんよ」 「下地先生」 「斉藤先生どうして?」 「僕が警察に全てを話した」 「あなたの違法な医療行為も全てね」 「田中さん達も証人になってくれる」 「そんな……」 「もうすぐ警察の方々がみえられるよ」 *数日後 「久美さん、退院してから大丈夫だった?」 「はい」 「福山さん、会社はどうなるのですか?」 「全て私のせいです」 「そんなことはないよ。久美さん」 「また、新たに会社を設立することにする」 「僕達は鏡の中に写った偽りの自分をみていたのかもしれない」 「久美さん」 「花束を落としたよ」 「私がですか」 「ああ」 「これは僕の気持ちなんだ」 「よければ僕と本当の自分を作っていかないか」 「私でいいのでしょうか?」 「まだ、私は薬の副作用で夜も眠ることができません……」 「大丈夫だよ。僕が久美さんを支える」 「どんなに辛くてもいつも僕がそばにいる」 「久美さんを守っていくよ」 「今から鉄道公園に行こう」 「そして、二人で走り出して生きていこう」 「はい」 *二人は鉄道公園へ着いた。 「着いたよ、初めてここで会った時と同じように満天の星空に天の川が流れている」 「今日も眠れなくていい」 「ずっと僕がそばについていてあげるから、もう、大丈夫だよ」 「久美さんはもう鏡の中の少女じゃない」 「二人で歩いて本当の自分達を見つけていこう」 「僕が守り続けていくから」 END
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