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「欲求不満かよ」
「しゃーねぇだろ!テスト明けで溜まってんだよ!」
唐揚げに伸びていた佐々の箸から手で奪って口に入れる。
「ヤってないの?」
「俺は一筋なの!好きになったらその間は一晩とかもしねぇし」
軽く睨みつつ今度こそ唐揚げを口に入れた佐々にムグムグと口を動かしながら答えた。
「俺が遊んでるみたいな言い方するなよ」
「遊んでんじゃん」
「我慢しないだけだわ」
「ちょっとはチン休……」
不意にむぐっと手で口を覆われて声にならない。
「二人ともちょっと声抑えてもらっていいかな?」
横目で見ると、俺の口から手を離しながらオオタさんが微笑む。
その姿がいつの間にか私服になっていて仕事が終わったことを知った。
「終わったんならオオタさんも一緒に飲みません?」
聞いてみると、
「むしろ、今の話聞いてたなら一緒に出るのもいいと思うけど?」
「一緒に出る?」
きょとんとするその顔もかわいくて俺はさっき塞いでくれたその白い手を掴む。
「オオタさんのこともっと知りたいな」
座ったままじっとその顔を見上げると、オオタさんは少し考えるような顔をした。
小柄でかわいい顔をしているがバイトではなく社員で、俺たちより五つ上の二十五歳。
木曜日は早く仕事が終わることを知っていてこうやってしょっちゅう来る俺たちのことはもう認識されている。
「とりあえず職場でする話ではないから……店は出ようか?」
微笑むオオタさんかかわい過ぎた。
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