歌う心臓

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僕の名前は、(いかり)健人(けんと)。 18歳の高校3年生だ。 『心臓が歌う』。 最初に僕がそれに気がついたのは、テストで100点を取った時だった。 「碇、凄いな。実は今回のテストは難しくて、100点を取れたのはクラスでお前だけだったんだ」 そう言いながら、僕にテストを手渡してくれた先生。 「ありがとうございます。とっても嬉しいです」 僕が先生にお礼の言葉を伝えながら、テストを受け取ったーーその瞬間、突然胸から歌声が響き出したのである。 「な、なんだ?!スマホか?授業中はスマホの電源を切っておかないとダメだぞ」 苦笑いを浮かべながら、僕にそう注意をしてくる先生。 しかし、僕だけが気付いていた。 その歌声が、僕のスマホの着信音とは全く異なっていることに。 いや、それだけではない。 そもそも僕はその時、スマホを机の脇にかけたスクールバッグの中に入れていたのだ。 だから、そもそも胸から着信音がする筈がないのである。 (なら、何で胸から歌声が……?) しかも、この歌声ーー中々終わる気配がない。 先程から、延々と教室中に響き渡る少年の無駄に軽やかで美しい歌声。 流石の先生も迷惑に思ったのか、僕に再度ーー今度は先程よりもやや厳しい声で注意をして来た。 「碇?スマホの電源は切りなさいと言っただろう?なぜ、まだ切っていないんだ?このままだと煩くて授業にならないし、皆に迷惑がかかるんだぞ?」
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