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その後、念の為保健室に行って確認をしてみた僕と先生。
僕が制服の上着やシャツを全て脱ぎ、先生が僕の胸に耳を近づけ確かめてみる。
と、
「碇。やっぱりこの歌声、お前の胸から聞こえてるぞ?」
僕の胸に耳を近づけたまま、そう告げる先生。
保健の先生も、一緒に確かめてくれたがーーやはり、歌声は僕の胸から聞こえているらしい。
その後、保健の先生や担任の先生の勧めもあり、学校を早退すると、連絡を受けた母と一緒に大きな病院で精密検査を受けることになった僕。
けれど、結果はーー。
「原因は不明です」
何枚も撮ったレントゲン写真を見ながら、無情にもそう告げる医師。
「胸……いや、正確には胸の中だから心臓かな。心臓が歌うだなんて、こんな症例は初めてだ」
医師は何度も首を捻りながら、僕と母にそう話した。
「このレントゲンを見れば分かる通り、息子さんの心臓は、見た目は普通の心臓なんです。口もついていないのが分かるでしょう?でも、検査の結果では……この心臓から、歌声が流れているんですよ。しかも、息子さんとは全く違う、声変わりする前の少年の歌声が」
「先生、息子は治るんですか?」
泣きそうな声でーー僕より必死な表情で、医師にそう詰め寄る僕の母。
しかし、無情にも医師はゆっくりと首を横に振った。
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