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「残念ながら、原因がわからなければ治しようがありません」
医師のその宣告に、失意のどん底に突き落とされる僕。
瞬間、僕の心臓が新しい歌を歌い始める。
今度は、まるで世界が絶望に満ち溢れてしまったかの様な、陰鬱で暗く悲しい歌だ。
あまりに酷い歌に僕は耳を塞ぐが、いかんせん歌が自分の心臓から聞こえているものなため、完全に防ぐことは出来ず、歌は無情にも僕の鼓膜を揺さぶり続けた。
(これでは、僕の耳と神経の方が先に参ってしまう)
一体何故、僕の心臓は曲をこんなにも物に変えたのか。
僕はそこが診察室でーー人前であるにも関わらず、頭を抱えてしまった。
と、その旋律の陰鬱さをより一層増していく心臓の歌。
その歌を聴いていた医師が、ふと呟いた。
「碇君?その歌は……もしかして、君の感情に共鳴しているのではないかな?」
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