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イチキとアオイが玉座の間から出ていくと、陽は長い時間、孤独に玉座に座していた。
頭の中で自分と対話していた。
王とは、こういうものだ。役目があるから権力がある。自分の足りないところを部下に補ってもらい、「自分の中の己という敵とも戦わなければならない。アオイは、やはり王配の適格者だ。
アオイの面談は、見たくない醜い自己でさえ引っ張り出す。
私は私という在る者(神)の本質を引っ張り出された。自分に都合のいい論理で成り立たせるのが得意な小狡い我の本質。これと向き合わなければ、我は『本物の王』になれない。やっと分かった。
正体が分かったからには、変わることはできる。
なぜ、他者のことは分かるのに、平気で貶めることさえできるのに、「自分そのもの」はわからないのだろう。神も人間もそれは同じだ。
陽は、その後、高天原の大草原に歩いて行った。
満天の星の夜空。今夜は天気がいい。星がよく見える。
高天原は、自分の国だ。民草を守りたくて『龍の島国』がした発展とは違うやり方でやってきた。これだけは、譲るつもりは無い。
不便を感じるくらいが丁度いい。不便を感じるから他者と協力する。協力してやっとやっていける。この状態を保ちたい。
カケル。。。カケルのことは愛していた。今も愛している。桃花がカケルを愛してるのと同じ愛を抱いている。
アオイ。。。別の愛で愛している。
愛は色んな愛がある。憎悪ですら愛の変形だったりする。分かっている。
でも、私が本当に愛さなければならない相手は他にいる。
最も醜く自分勝手な者。その者を愛せなければ全ては闇に沈む。
それは、私だけの課題ではない。心を持つ全ての者たちの課題だ。
明日の裁断。
裁断は、この日を待っていたカケルが引き寄せた。
500年前からのカケルの反抗は異議申し立てだったのだ。
私は彼を全く見ていなかった。まさか、柱だったなんて。。。
彼は尋常では考えられない優秀な頭脳を持った人間。だから、記憶も保持できるのだと思い込んでいた。
違う。決めつけていた。
もう一度満天の星空を見上げると陽は目を閉じた。
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