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その日の夜。ヌチは家で、ナノハに言った。
「リョウとヤった。顔も良いけど、あっちもいいね。姉さんが惚れるのも分かる。」
「なんだって?!」いつも穏やかなナノハの表情が、真っ赤になって眉を吊り上げているのを見てヌチは腹の中で転げ回って笑った。
「でもね。それはご褒美なんだ。姉さんとの逢引きの約束を頼まれた。明日の昼、リョウの村に入る山裾の山道の所で待ってるって。」
それを聞いたナノハは、ヌチの手を握って「ありがとう。ありがとう。」と言いながら泣いた。
翌日の昼、リョウは川の土手でナノハを待っていた。いつまで経ってもナノハは来ない。
ナノハは、リョウの村に入る山裾の山道でリョウが来るのを待っていた。
ナノハの元にムラオサと男衆3人がやって来た。
「素直な良い子だと思っていたのに、村抜けしようだなんて飛んでもない女だ!」ムラオサが怒鳴った。この瞬間にナノハは嵌められたと悟った。
そして、自分が生きている「村」の不自由さにずっと自分は耐えてきた事にも気がついた。
ナノハは逃げ出した。山道を上に向かって走り出した。これから起こることは分かっている。折檻されて村に連れ戻される。ムラオサと一緒にいた男衆に乱暴に扱われる。自分は獣以下の扱いを受ける。
もう、嫌だ!リョウが好きでも村の掟に逆らわず、心で想っていればいいと我慢してきた。
本当は、リョウ以外の男とヤるのも嫌だ。それが、死ぬまで続くのも嫌だ。
山を登り切ると切り立った崖に出た。振り返るとムラオサと男衆がナノハを追い詰めて「観念しろ!」と言いながら近づいてくる。
ナノハに迷いはなかった。これ以上汚される前に終わりにしよう。
ナノハは、ムラオサの顔を見ながら、後ろ向きで崖から落ちていった。
ナノハのその強く美しい気は、地上から高天原に届いた。陽の目に止まった。女王は反射的にその気を掴んで召し上げた。
身綺麗になったナノハは、女王の女官に取り立てられた。鏡というものを初めてみた。髪の毛が草の色になっていた。顔は、みんなに可愛いと言われていたけど、普通。でもヌチよりは可愛い。
髪の長い綺麗な女の人が、輝いている着物を着てナノハに声をかけた。
「名はなんという。」
「要らねえ。新しく付けてくれ。」
「左様か、では、ウリではどうか。」
「オレはウリだ。」ウリは頭を下げた。
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