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8、橙色の焚き火の火
その日は、カケルが作った「魚の仕掛け」に川魚、ヤマメがいっぱい入っていた。
カケルは上機嫌で「外で家族みんなで飯を食おう。」と言った。
夕方から3人とお腹の子。家族4人で外で焚き火を起こした。木の枝に刺したヤマメに塩を振って焚き火で焼いた。周りは背丈の低い草地で、まるで高天原のようだった。
家族みんなで笑い合って焼き立てのヤマメをお腹いっぱい食べた。
ヒカルはお腹いっぱいになると早々と寝てしまった。横になった私とカケルの間にヒカルはいた。もう1人は私のお腹の中にいた。
突然、カケルが言った。
「ごめんな。」
その言葉を聞いたら、私の目から涙が溢れ出した。その涙は止まることなく私は嗚咽を漏らして泣いた。
カケルはそんな私をヨシヨシとでもいうかの如く頭を撫でてくれた。
私は、悲しいのとやるせ無いのと幸せが混じって胸がいっぱいになった。
私の方からカケルに寄り添って、その晩は眠った。
遥か遠い昔の出来事なのに、あの橙色の焚き火の火は私を捕らえて離さない。
思い出すたびに涙が溢れる。あれは神聖と言っても良い時間だった。尊い思い出だ。
あの洞穴も私にとっては「子どもを産んだ聖地」だ。それなのに、それも翔太と実果に踏みに弄られた。
私の心の中には、あの火が今も燃えている。熾火のように消えない。
橙色が暖かいと海斗は言ったが、本当にそうだと思う。「家族の色は橙色」だ。
結果的には、その夜が縄文の最後の夜となった。
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