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「カケルと君のことは過去のことだ。私は今の君の気持ちを疑ってはいない。
でも、私は裁断の日にカケルの精神鑑定の意見陳述をする。それが、私の役割だと思うから。
彼は罪を犯した。でも、先払いの幽閉で服役は既に終わっている。
彼は人を殺してはいない。結果的に死に繋がった事例は沢山起こしているが、それも彼1人の責任ではない。
恐らく、カケルは500年前の出来事を話に出してくるだろう。
君は王だ。裁断では務めて冷静に判断するんだ。進め方をカイトと相談する。」
そう言うとアオイは王の間から出ていった。
陽は床に突っ伏して泣き続けた。
アオイに見放されたと思った。また、ひとりぼっちになると考えながらも、何処かスッキリした気もしていた。
私は、これでやっと『女王』というお役目を1人でもやり遂げられるようになった。
ようやく大人になった。
そんな確信が心の中から湧いてきていた。
アオイは、カイトと少し打ち合わせをすると『青の離宮』に向かった。
世話人頭のヒビキはアオイの顔を見て、すんなり離宮に入れてくれた。
アオイは、1人でカケルの部屋に行った。
「神澤。今日は、僕を泊めてくれない?いいよねぇ。むかし散々、アリバイづくりに協力してきたんだから。」
カケルは1人で晩酌をしていた。手からぽろりと盃を落とした。
「早川、何しにきたんだよ。」
「うん。陽が縄文の話をしてくれたんだけどさ、君、罰が重すぎ。で、僕さ、君の弁護側の立場で精神鑑定書作るから。話を詳しく聞かせてよ。」
「はぁ?」
カケルは本当に驚いた。
間男が亭主の弁護するって?何考えてんだコイツ。
早川は昔と全然変わってないと思った。頑固で本心を中々見せない。一見弱そうで凄く強い奴だ。
そして、陽の事以外は隠し事もしなかった。
ここでカケルも気がついた。自分にとって「友達」と言える相手は、縄文で生まれてから1人しか居なかった。
それは、早川葵だったことに。
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