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村の食糧事情は、基本的に採取狩猟でした。
私がいた村には腕のいい猟師の集団がいました。その中のリーダー、リョウは見た目も良く、物言いはぶっきらぼうでしたが、優しさが垣間見えるそんな若者でした。20歳だと言っていました。
女も女の子も、みんなリョウに憧れていました。私は、リョウの目の奥にある絶望の光が気になっていました。
じっとリョウの目を見ていたら、リョウが「テメェは、まだガキだから相手はしないよ。」と私に向かって言いました。意味がわかりませんでした。
夜、仮の弟にリョウのことを聞いてみました。
「リョウは、大事な女を殺されたっていうか、その女は自殺しちゃったんだ。そうなるように仕組んだのは死んだの女の妹だ。怒り狂ったリョウは、その女の村を襲撃した。男は全員殺して、女と子供はこっちに連れてきた。他の男たちは女が増えて大喜び。」
「なんで女が増えると大喜びなの?」
「なんだ。ねぇちゃん。その年で分かんないの?」
「分かんない。」
「じゃあ、祭りに出るといいよ。ねぇちゃんは、まだガキだけど、後2、3年だ。」
私は仮弟が言ってることが、さっぱり分かりませんでした。
祭の日。私は信じられないものをみました。
昼間から、他の村の男も村に入ってきて人目も憚らず、外で男女が交わるのです。それも、1回ではなく相手も決まった1人ではありません。
祭りの日は“乱交する日“でした。
私はムラオサに「どうして、あんなことをするのか?」と訊きました。
「丈夫な子を授かるために。
お前は子供だから分からないだろう。子が産まれても一年後に生きているのは半分以下だ。色んな組み合わせで子作りする。我らが生き残る知恵だ。
男はかわいそうなもんだ。誰の子が自分の子か分からない。女は自分の子が確実に分かる。産むからな。」
「そこまでして、どうして子供を増やさなければならないの?」
「子供が減ったら、労働力が減る。みんなで一緒に生きている。食い物を取っても皆んなで分ける。女の腹も皆んなで分ける。ただ、それだけだ。お前も、この村の女だ。穢れが来たら子が産めるようになる。村に貢献するのは当たり前だ。我らは、全員で1人なのだから。」
採取狩猟生活は、貯蔵ができない。蓄財もできない。
一夫多妻は、モノをたくさん持っている男がいる社会が出来上がって成り立つものです。
あの時代は、皆んなで全てを分け合う時代でした。
食べ物も住居も命も。
私には、到底住める世界ではありませんでした。女は出産でかなりの数が亡くなります。それなので「女なら村に入れる。」という意味だったと、やっとわかりました。
私は、こんな野蛮な生き物を見守っていたのかと悲しくなりました。村抜けをすることにしました。私が村にいたのは、たったの1週間です。
私は、夜こっそりと竪穴式住居を抜け出しました。平地から山に向かって山の頂上で飛び降りて、着ている『衣』を捨てて帰ろうと思ったのです。
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