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アオイは顔を歪めた。
「悔しいけど、僕も認めるよ。陽は、僕と会う直前まで4000年間、君を愛していた。
そして、同じぐらい憎んでいたんだ。
憎しみの根っこには、彼女の“女王である“という自己愛性パーソナリティがある。病気ではない。彼女はその役割を持っている。」
カケルは驚いた顔をした。「じゃあ、俺はどうすればよかったんだ。」
「君の起こした反抗で流れが変わった。時が満ちたとしか言えない。だけど、これだけは言える。君は強いよ。普通ならとっくの遠に精神が破壊されている。ああ……500年前の焚き火の話をしてくれる?」
カケルは幸せそうな顔をした。
「あの特別な夜を再現したら、昔に戻れると思った。何回か桃花と2人で焚き火で魚を焼いた。それを聞きつけたんだろう。陽とヒカルが夜、やってきた。
最初は楽しく火を囲んで俺とヒカルは酒を飲んでいた。俺は幸せで、つい言ってしまった。
『家族4人揃うとこんなに楽しいじゃないか。また、みんなで一緒に暮らそう。』って。その瞬間、陽は、俺を怒鳴りつけた。
“貴様と一緒に暮らすなど永遠にあり得ない!我は高天原の女王ぞ!“
そしたら、ヒカルがいきなり殴りかかってきた。“お前は母上に何をしてきたか分からぬのか!“って怒鳴りながら容赦なく俺が気を失うまで殴ってきた。
目が覚めた時、桃花が心配そうに俺を覗き込んでいた。俺はといえば、泣いた。そして、耐えても無駄だって悟った。」
アオイは呆れていた。
「あのさ、ヒカルは病的なマザーコンプレックス。所謂マザコンだ。ママの話しか聞かないし、ママの手先だ。君が殴られたのは不当な暴力を行使されたんだよ。陽は、子育てで失敗している。君は幽閉され、弊害は子供達が背負ってるとしか僕には思えない……分かった!色々、調べなければならないことが出てきた。今日は帰る。裁断は8日後だ。それも知らされてないんだろう?」
「そうか。後8日で終わるんだな。すっきりした。」
カケルは満面の笑みを浮かべた。
「きちんとした精神鑑定書を作る。それと他にも書類が必要だ。当日まで会えないけど、頑張れよ。」
アオイは、そう言うとカケルの肩を叩いた。
アオイは青の離宮を出る時、世話人頭ヒビキに訊ねた。
「他国に行きたいんだが、1番早く行ける方法は?」
「どちらまで行かれるのですか?」
「赤国。実家だよ。」
「それでは、馬が1番早いかと。4日ほどかかりますが。」
「4日……。うん。それが1番早いんだよね。選択肢はないや。馬を借りたいのだが。」
「ここの馬で宜しいですか?」「かまわない。」
アオイは馬を馬装すると乗って片足で馬の腹を刺激した。馬術は医師になってから、趣味で時々休みの日に楽しんでいた。
それも何十年ぶりだったが、馬に乗って仕舞えば思い出した。
天翔ける馬に乗る。殆ど御伽噺だなと思った。
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