10、旅の終わり

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アオイは顔を歪めた。 「悔しいけど、僕も認めるよ。(あかり)は、僕と会う直前まで4000年間、君を愛していた。 そして、同じぐらい憎んでいたんだ。 憎しみの根っこには、彼女の“女王である“という自己愛性パーソナリティがある。病気ではない。彼女はその役割を持っている。」 カケルは驚いた顔をした。「じゃあ、俺はどうすればよかったんだ。」 「君の起こした反抗で流れが変わった。時が満ちたとしか言えない。だけど、これだけは言える。君は強いよ。普通ならとっくの遠に精神が破壊されている。ああ……500年前の焚き火の話をしてくれる?」 カケルは幸せそうな顔をした。 「あの特別な夜を再現したら、昔に戻れると思った。何回か桃花と2人で焚き火で魚を焼いた。それを聞きつけたんだろう。(アマ)とヒカルが夜、やってきた。 最初は楽しく火を囲んで俺とヒカルは酒を飲んでいた。俺は幸せで、つい言ってしまった。 『家族4人揃うとこんなに楽しいじゃないか。また、みんなで一緒に暮らそう。』って。その瞬間、(アマ)は、俺を怒鳴りつけた。 “貴様と一緒に暮らすなど永遠にあり得ない!我は高天原の女王ぞ!“ そしたら、ヒカルがいきなり殴りかかってきた。“お前は母上に何をしてきたか分からぬのか!“って怒鳴りながら容赦なく俺が気を失うまで殴ってきた。 目が覚めた時、桃花が心配そうに俺を覗き込んでいた。俺はといえば、泣いた。そして、耐えても無駄だって悟った。」 アオイは呆れていた。 「あのさ、ヒカルは病的なマザーコンプレックス。所謂(いわゆる)マザコンだ。ママの話しか聞かないし、ママの手先だ。君が殴られたのは不当な暴力を行使されたんだよ。(あかり)は、子育てで失敗している。君は幽閉され、弊害は子供達が背負ってるとしか僕には思えない……分かった!色々、調べなければならないことが出てきた。今日は帰る。裁断は8日後だ。それも知らされてないんだろう?」 「そうか。後8日で終わるんだな。すっきりした。」 カケルは満面の笑みを浮かべた。 「きちんとした精神鑑定書を作る。それと他にも書類が必要だ。当日まで会えないけど、頑張れよ。」 アオイは、そう言うとカケルの肩を叩いた。 アオイは青の離宮を出る時、世話人頭ヒビキに訊ねた。 「他国に行きたいんだが、1番早く行ける方法は?」 「どちらまで行かれるのですか?」 「赤国。実家だよ。」 「それでは、馬が1番早いかと。4日ほどかかりますが。」 「4日……。うん。それが1番早いんだよね。選択肢はないや。馬を借りたいのだが。」 「ここの馬で宜しいですか?」「かまわない。」 アオイは馬を馬装すると乗って片足で馬の腹を刺激した。馬術は医師になってから、趣味で時々休みの日に楽しんでいた。 それも何十年ぶりだったが、馬に乗って仕舞えば思い出した。 天翔ける馬に乗る。殆ど御伽噺だなと思った。
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