11、王の補佐官

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11、王の補佐官

赤国は、極東の神界をまとめる役割の国である。 他国からは「赤い気の渦」にしか見えない。国民は全員、公務員。財政収入は傘下、29カ国から上がってくる献上という上納金である。 その上納金は賄賂とも言われる。 赤国の国民は「赤族(せきぞく)」と呼ばれる。赤族は赤い髪と赤い目をしている。心性にも特徴がある。異性関係において決まった1柱しか愛せない。振られても、片思いでも、ずっとずっと引きずるのである。ズルズルと。 王、セキは、ワーカーホリックもいいところで、以前は赤いボロボロの野良着に裸足。ザンバラ髪で王宮内をどすどす闊歩していた。 セキは、王妃エリを娶ってから背広を着るようになった。エリに嫌われてしまう危機感からスタイルを変えたのだ。 赤王宮の色は赤。王宮は天井が高い巨大な立方体の形をしている。その中に中央広場を挟んで政務区と居住区が対象に存在していた。天井が抜けているわけではない。政務区、居住区共に箱の中に高層ビルが建っている。 国民全員が公務員の世界は結構きつい。評価は相互評価である。衣食住全てが配給制で職位が上がると広い住まいに住める。差別化はせいぜいそのくらいである。 赤族の心性により子供は少ない。好きになったり、なられたりすると厄介なので「赤女(せきおんな)」達は、ほぼ全員『ブス変化』をしている。これは、女達の公然の秘密である。 そして、赤族の中でも優秀な一部の者は素粒子を扱う「物体出現」の能力を持っていた。物から素粒子へ。素粒子から物やエネルギーへ変えることができた。殆ど魔法である。 王、セキは合理的でない思考と行いが大嫌いであった。だから、残酷なことを平気でするといった一面もあった。 反面、保守的ではなかった。新しい考え方でも「理」に適っていれば、どんどん政務に取り込んだ。 赤国の王の補佐官、つまり側近、大臣達は全員ワケアリである。 出自がどうあろうとも能力第一主義で採用した。今居る補佐官は4柱。それ以外に秘書官が1柱。秘書官ロウは金髪碧眼。西の神界の息苦しさに耐えられず、東に国替えをした。つまりは、クリスマスケーキもおせちも食べたかったのである。 最初はセキとロウで国を回していた。ロウは子供ができ育休を取ってしまった。 セキ1人では仕事が捌ききれず、他国から最初は3柱の補佐官を取った。その3柱の生国も今はない。セキが「廃国」により処分した。 王妃エリは、ロウの娘であった。当時14歳の娘を連れて王宮に挨拶に来たロウは、その日から2度と娘を連れて帰ることはできなくなった。 娘は、浮浪者のような王に一目惚れをしてしまったのだ。王も同様にエリに一目惚れした。 ロウは今だに納得できていない。どうして、あんなジジイに娘を嫁がせなければならないのだと。見た目は老いなくともジジイはジジイと憤懣やる方ない想いがあった。
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