11、王の補佐官

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セキは、あーくんが怒鳴ったので驚いてしまった。 「高天原の『思しかまひ』で囲まれていたのは、その赤子です。彼は女王に4000年幽閉されていたのです。 「あ……そー言えば同じ名前だ。カケル。よくある名前だから気にしていなかったわ。」 「裁断は4日後です。お父さんも落とし前をつけてください。指つめてもらいたいくらいだ! カケルの子供達は、女王の子供達は、人間上がりのゴロツキの召し上げ者の子とずっと白い目で見られ続けているんです。 4000年、4000年ですよ! 彼は尋常じゃないほど頭が良く、3500年幽閉に耐えた。こんなの人間上がりにできるわけがありません。 記憶も失っていない。高天原の召し上げ者達は、500年で出自を忘れます。 お父さんの好みで彼は沢山の時間を失ったんだ!」 アオイはセキのIQO○を取り上げて床に叩きつけた。そして、父親の胸ぐらを掴んだ。 「きっちり、落とし前つけんかい!ゴラァ!」 セキは、あーくんはエリにそっくりだと思った。 「でもさ、あーくん。落とし前ってどうやって付けるのよ。時間は遡れない。多元宇宙理論でいけば可能だけど、あーくんは、今ここのことを言ってるんでしょ?」 「彼の出自の証明書を作成してください。赤国の王セキの名前と実印を押印した正式な文書です。また、裏付けのある資料を添付してください。女王が最も信頼している学者に読み上げさせます。裁断の前に。 高天原の女王は、ものすごくプライドが高いのです。自分では、出自で他者を差別をするような愚か者ではないと思い込んでいますが、違います!政務の担当者、朝廷の主だったものは“本物の柱“で構成しています。女王の女官達も召し上げ者でも最高レベルの気を持った者しか置いていません。 女王であることを毛嫌いしていますが、それも仮面です。 自分だけが、“特別な存在、取り替えの効かない存在“と差別化しています。 彼の件が拗れた最大の原因は彼が“人間“という存在だったからなのですよ。 女王は、人間なんかを愛した自分を認めたくもなかったのです。子供達に対しても「誇り高き存在」であること強要していました。 上の皇子には「どんなにキツイ仕事でも黙々とこなす人格者」。 下の皇女は成長しないのでお役目も与えませんでした。身体は子供でも十分政治に関われるくらいの頭脳を持っているのに、何もさせなかった。女王の都合で高天原を離れる時だけ、「女王の傀儡」をさせました。」 結果、皇子は病的なマザーコンプレックス。皇女は、これもまた強烈なファザーコンプレックスになっています。 セキはワタリが持ってきた紙に「カケルの出生証明書」を書き出した。 リョウは、爽国と赤国の間で当時取り交わされた「赤子の売買契約書」を探していた。契約締結に至るまでの商談の経緯に係る書類も含めて探していた。
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