11、王の補佐官

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セキは、書類をアオイに渡す時に言った。 「でも、あーくん。これを女王が知ったら、あーくんが女王から捨てられるかもよ。」 アオイは至って平静だった。 「なら、それで結構です。赤国の5柱めの王の補佐官になるだけです。」 「裁断まで4日。帰りは飛行艇で送らせよう。」 アオイはキッとセキを睨みつけると「結構なケチですね。お父さん、金に汚いでしょう!私は組長のボンですから、車の1台くらい買ってくれないとダメじゃないですか!」と怒鳴った。 「おベンツかB○W?」 「本当にケチだな。国産最新型の飛行艇に決まってるでしょ!3時間で帰れるから、おねだりも織り込み済みでやって来たんだよ! これから、操縦訓練です!」 アオイがワタリと駐機場に行ってしまうと、セキはため息をついた。 「可愛かったのに……あーくん、あんなになっちゃって。」下界落としはもう止めようと思った。 「下界落とし」は、柱を敢えて人間として『龍の島国』での人生を送らせることだ。何回も何回も人間の人生を体験させる英才教育プログラムだ。セキは、どうしても武力が最強の直属の部下が欲しかっただけだった。実務能力が低いものは、そもそもそばに置かなかった。 それを赤子の柱でやってみたのが、リョウとカケルだった。 最初の人生でリョウは大量殺人犯になり、カケルは行方不明になった。 リョウは、2000年かかってセキの期待通りの柱となって戻ってきた。リョウは着任すると直ぐ「筆頭」にした。 先に補佐官になっていた3柱は、ブーブー文句を言った。 でも、リョウの「集団のリーダーになれる能力」を認めざるを得なかった。 他の3柱は「苦労したおぼっちゃま」止まりで、集団を率いるなど到底無理なことだった。でも、リョウが入ったことで王の補佐官たちは変わった。 リョウは、若頭という名の筆頭補佐官。リョウが率いているのはスパイ集団だった。赤国内はもちろんの事、傘下29ヵ国にリョウの部下は潜入している。 「高天原」は廃国しようにもできない国だった。直接「龍の島国」を見守っている。 女王は気分屋で小さなトラブルをいつも抱えていた。 アオイは「自分のプライドが最優先の女王」と言っていたが、それは核心ではない。 極東の神界にあって、最もキツイ役目を持っているのが「高天原」だ。 エリが王の執務室に入ってきた。 エリは相変わらずケチでリメイクを繰り返したドレスを着ている。地位に見合った体面は繕うが、すごくシビアな性格だ。 「セキ、我らの息子は思った以上に器に見合った柱になったな。セキは、死んでも安心になったではないか。」 こういうことを平気で言う。 「エリ、我は死なないと確信して言っておるな。ホント、あーくんはエリにそっくり。」 「全部は、定めだ。セキの下界落としも高天原の幽閉も。来るべき時は目前だ。それは突然に起こる。セキも盤面を見て、多角的方向から国を動かす準備をした方がいい。ヘタを打てば全ては無に帰す。我らの存在の意味を考えれば分かりきったことだろう?」
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