14、裁断

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「不敬罪じゃ!桃花を取り押さえろ!」と女王が叫ぶ。 法務部の役人達に取り押さえられた桃花は、女王に向かって唾を吐くと大声で言った。 「私にも罰を下せばいいだろう!父と一緒に人間になる!『龍の島国』の方が此処よりマシだ!」 女王は冷たい目で娘を一瞥すると言った。 「最も尊き存在の我に手を出し、唾を吐くなど……決まっておるわ!お前も追放じゃ!父娘(おやこ)仲良く人間になって死ぬが良い! 処刑は月の階段だ。次の新月の夜、月詠が月の階段を下ろす。それで魔物だらけの下界に行くが良い!」 桃花はカケルと共に青の離宮に連行された。 ヒカルは女王に抱きついた。 「母上、大丈夫でございましたか?」 (あかり)はニッコリ笑って「想定内じゃ」と答えた。 女王もヒカルも見物柱も王の間から居なくなるとイチキとアオイだけになった。 アオイは右手を伸ばすと部屋の補修を始めた。瓦礫を素粒子に戻し、元の場所に復元していく。そのスピードは速かった。30分で王の間は元通りになった。 イチキはあっけに取られていた。 「話に聞いていましたが、目で見ると殆ど魔法ですね。」 「違う。アインシュタインの相対性理論。E=mc2。物質はmc2というエネルギーに変換される。逆もまた真也。それをやっている。赤国が赤い渦にしか見えないのがこれだよ。魔法じゃない。理論が具現したものだ。それを扱う力を私は持っているんだよ。ねぇ、月の階段って何?」 「“月の階段“は在る者(神)であった者が人間になる装置のような物です。本当に階段なんですよ。高天原の草原の隅に階段口があります。新月の夜だけ月詠様が階段を下ろします。 それを一段ずつ降りて行くのです。一段降りるごとに高天原の記憶は無くなり、身体は人間に戻っていくのです。 少しロマンチックでしょう?最後くらい綺麗にということでしょうかね。」 「ふん。少女趣味。発案者は女王だろう。」 「まさしくご名答。」 イチキは内心呆れていた。 今日の裁断。揃いも揃って全員アカデミー賞だ!
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